第四章⑦
アメリアはエリコの腰にしがみついて、背中にほっぺたを付けて、次々に変わる景色を見ながら、エリコの速さに驚いていた。
ブリジットの背中にいるときよりも、ピチカートの後ろよりも、速度を感じた。
人を一人、後ろに乗せているのに、まるで、それを知らないような動き。
それがキャブズを生業としている魔女に備わる特性なのだろうか?
素敵な速さにアメリアは目を閉じて、それを堪能したくなった。
この速度を出す、エリコのことをもっと知りたいと思った。
アメリアはエリコみたいになりたいと思った。
と、そのとき、エリコが通過した遥か後ろで、何かが爆発した。
アメリアは目を開いて後ろを見る。
建設中のビルディングが爆発したところから崩れ落ちていた。
エリコたちが通過した場所は瓦礫の山になっている。
きっと、速度が足りなかったら、下敷きになっていたのだろう。
「遅いな」
アメリアはエリコの横顔を見た。穏やかに微笑んでいて、綺麗だった。
「どうしたの?」エリコは振り向いてアメリアに聞く。
アメリアは叫ぶ。「ダテさん、ま、前!」
「えっ?」
「きゃあ」
鉄橋が目の前に迫っていたのだ。アメリアは悲鳴を上げてギュッと目を瞑った。体がドリルのように一回転したのが分かった。目を開けて後ろを見る。鉄橋は遥か後ろにあって、その鉄橋も爆発した。鉄骨が川に落下する。
「遅いな」
エリコはそう呟いて、さらに加速した。アメリアは振り落とされないように、必死にしがみつく。
「あれ?」三つの連続した爆発音をバックにエリコが呟く。
「きゃああああああああああああああ!」アメリアは三回転に悲鳴を上げる。
「こっちは?」エリコは路地の行き止まりで急な減速をして右へ旋回。ミリカの進んだ方向と逆を行った。アメリアは振り落とされないようにぎゅっとしがみついているだけ。
「ほうら、やっぱり」
アメリアは、エリコが停止したのが分かった。それでもまだアメリアはエリコの体をギュッとしている。
アメリアは花の匂いを感じて、目を開ける。
飛んでくるミリカと、花が咲き乱れている世界が見えた。




