第三章③
翌朝、ピチカートは魔女の塔の地下の拘置所に、昨夜閉じ込めた東洋の魔女の様子を見に訪れた。拘置所は地下に広がる牢獄から離れた場所にあり、一つの長方形の部屋になっている。金属製の扉を開けると奥の方に鉄の柵で阻まれた拘禁者のスペースがあり、東洋の魔女は壁から蔦のように伸びている鎖に手足を縛られていた。白黒のツートンカラーの囚人服を着せた東洋の魔女は、まるで死体のようにピクリとも動いていない。
しかし、すやすやと気持ちよさそうな寝息が聞こえた。
一晩看守をしていたシャーロットのものだった。壁際に備え付けられた机に全身を預けて眠っていた。
「こら」ピチカートはシャーロットの頬を抓って起こした。
「はっ、」シャーロットはガタッと目を覚ました。ピチカートと目が合って、ほっと胸を撫で下ろしている。「なんだ、ピチカートか、脅かさないで頂戴よ」
「誰だと思ったの?」
「ヘンリエッタが私の弱みを握ったかと思ったの!」
「常日頃から復讐されるようなことをしているのね、」ピチカートは遠い目をする。「可哀そうなヘティ」
「それよりも」シャーロットは軽く咳払いをする。
「魔女の具合は?」
「寝たっきりで、全然、何も」
「シャーロットが寝ていた間は?」
「失礼ね、三分も寝てないわよ」
「コレは、どこの民族衣装かしらね?」
東洋の魔女が持っていた色鮮やかな布、広げてみると、多分、身分の高い女性が纏うような艶やかな衣装にも見えた、シャーロットの魔法のせいで水を含んでしまったから、こうやって拘置所の壁に吊るしていたのだ。触るとすでに乾燥していた。もともとそういう造りなのかもしれない。ピチカートはそれを折り畳んで小さいサイズにした。
「シナだと思うな、」シャーロットが言う。「その国しか知らないもん、あっ、ピチカート、このボトルは、どうする?」
それも東洋の魔女が風呂敷に包んでいたものである。やはり、普通に考えて、東洋のお酒だろうか?
「パレードが終わったら、調べることにしましょうか、」ピチカートはボトルを手にして言った。「私はドラゴンに乗らなくちゃいけないし」
「看守は、引き続き私が?」
「いいえ、」ピチカートは首を振る。「アメリアにやらせるわ」
「あら、どういう風の吹き回し?」
「あの子、かなり追い込まれてる、ずっと無駄な、こう言っては可哀そうだけれど、ずっと無駄にパレードまで飛ぶ練習を続けそうだから、なんだか見ていられなくて、仕事を与えてあげれば、そういう時間が無くなるでしょ?」
「返って可哀そうな気もするけれど、パレードの日までここで看守をやらせるんだったら、練習が出来ないって状況に、アメリアちゃんは困惑しそう」
「その前に私がドラゴンに乗って、アメリアが飛べない原因を探し出すわ、」ピチカートは細くて長い人差し指を立てて言った。「アメリアのことを思うなら、少しフォローしてあげてね」
「もちろん、私はパレードまで暇だから」




