表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

7:獣

その地下はここからだと暗くて全体は見渡せない。


「え〜っと…ライト。」


光を出せる初歩魔法。

これも光魔法の一種なので俺にも使えるようだ。

授業でやっててくれたら俺もこの才能をすぐに発見できたんだろうに。


照らされた地下は壁がレンガ。

それぐらいしか説明の仕様がないくらい何も無い一室だった。

ここにいても仕方ないので俺たちは降りてみる事にした。


「とはいえこのまま降りたら痛いぞ。特にお前たちは」


ヘルはのんびり穴の方まで進んで行き下を見下ろした。

確かに地面まで3mちょっとはあるな。

ヘルは頑丈だからいいが,レイなんかべたんと落っこちそうだ。


「…何よ…。」


俺がそんな事を考えながらレイを見ているとそんな思いが伝わったのかむすっとしたレイは穴まで歩み寄って。


「いいもん。私にはこの子がいるもん。えぃ!」


そうやって出てきたレイの召喚獣。スライムだ。

柔らかそうな体だからクッションにはなる…よな?

この前サーフボードっぽ変形してたときはしっかりした強度があったが。

で,そのスライムを地面に置いてクッション代わりですか?


「頭悪いなぁ。そんなんじゃこの子が可愛そうじゃん。」


そういって思いっきり抱きしめられてるスライムが妙に苛立たしい。傍線一本の目と顔も今回ばかりは嫌味っぽく見える



「スライムを滑り台みたいにした方が良いんじゃない?」


ヘルは俺を哀れむように言ってきやがった。

何か最近こいつも嫌味キャラなのか?おい。


「その通り〜!さすがヘル!誰かとは大違い〜。」


分かったから早くしようぜ。

トリオ漫才なんかしてる場合じゃないしする気も無い。


「はいはい〜分かりました〜っ。じゃよろしくね。」


そう言ってスライムを穴の前に置くとスライムは壷から出て


きた蛇のようににょろにょろ伸びていった。

こいつ凄い伸縮性あるのな。


「はい。それじゃあ滑りましょ〜ぅ!そぉれっ!」


勢いよくレイは滑っていったが地下には何があるか分からないって恐怖心は無いのかね。

こういう時レイみたいな性格って楽だろうね。まったく。


レイに続いて俺とヘルも滑り終えるとスライムはまたにょろにょろと縮んで元の形状になり,レイの所へ戻っていくとポンっと消えてしまった。

召喚獣は役目を終えるとこんな風に消えてしまう。


「お疲れ様〜。」


スライムが消えたほうへ手を振っているレイ。そしてその後ろにはこの個室唯一のドアがあった。


「いかにも怪しげなドアだな,おぃ。」


「…そこしかないんだ。行くしかないだろ。」


「い・い・か・ら!行くんでしょ!ほら〜私がいるんだから大丈夫!レッツゴー!」


どこから来るんだ,その自信は。

レイはドアのドアノブに手をかけるのではなく,思いっきり風魔法でドアを吹き飛ばしてしまった。


「もう床…今で言う天井だけど,ぶっ壊しちゃったんだから


どれだけ壊しても変わらないわよっ!触ったら麻痺するとかそんなくだらない仕組みがあるかもしれないんだし,触らなければ無害よっ!」


なんか最近レイぶっ壊れてるよな…;

前までもう少し大人しかった様な…。


「その方が安全かもしれないな。下手に触ってやられてしまってもつまらないオチだし。ただ魔法に反応するトラップが無いとも言えないから注意しろよ。」


ヘルも段々おかしくなってきてるよな。

俺は……自覚は無い。


「だけど…ここ…絶対危ないよ…。」


レイがドアを吹っ飛ばした後動いていなかったがその先の光


景は凄まじい物だった。

またさっきまでの個室。

ドアもさっきまでと同じで一つ。

でもさっきの部屋と違う箇所が一つ。

馬鹿みたいにでかい怪物。

天井まで届いてる大きさの獣。

何に置き換えて示せって言っても今までに見た事の無い珍獣だ。

頭は…何かというと犬だな。全く可愛くないが。

胴体は…20倍の大きさの虎,腕は…キャノン砲みたいなのとかにみたいなハサミ。

足はウサギみたいな感じ。

としか言い表せない。


腕だけ生物学的におかしいぞ。

そんな事を思っているとそのキャノン砲をこっちに向けて見事にチャージしようとしてる音がキュインキュイン鳴っている。


「危ないっ!!」


咄嗟とっさにレイに飛びついていた俺の反射神経は自己ベストだとは思うが今はそれどころじゃない。

レイがいた場所には3m四方くらいの穴が壁にぽっかり開いていた。

ヘルは頑丈だから良いだろう。

案の定こいつは床に伏せて攻撃をかわしていた。


俺はレイに覆いかぶさっていたのに気付いてすぐさま横に転がったが,レイはなんとなくくらくらしてるように見えた。


「…もぉぉっ怒った!ロス!ヘル!こいつ倒そうっ!!」


元からその気だ。


「スプレッド!!」


レイの魔法は見事に相手にヒットした。

確かにヒットした。

その水魔法の威力は確実に上位ランク魔法に匹敵する。

使用者も腕輪装備のレイだ。


だがその化け物はその水を蟹のハサミのようなもので一払いするだけで完全に消し去ってしまった。


「ファイアブレード!」


ヘルの魔法もその図体に似合わない速度でかわされてしまった。

明らかにその身のこなしはウサギより早い。

この二人の魔法も効かないのなら俺がやるしか無いのか…。


「ライトニング!」


闇属性の魔物にとって光魔法は効果抜群だろう。


しかしこいつは常識はずれの強さの化け物のようだ。

一瞬で間合いを詰めて来たかと思うと光魔法に直撃しながらもこっちに突っ込んできた。


「…くっ…。」


即座にバリアを張っていたのでどうにかなったが一回の攻撃でバリアが割れてしまった。

光魔法も致命傷では無い様だ。


「…ドアまで走る!早く!」


…おい…。

レイは逃走モードでドアの場所まで行った。


だがドアは開かない。


「ストォームッ!!」


そして魔法でも壊れない


「なぁんでよぉ!!」


「こいつがこの部屋の鍵になってるんだろ。つまりこいつを倒さなければ次には進めない。そんなシナリオなんだろう。」


ヘルはバリアを張りながら俺たちを守っている。

そして化け物はキャノン砲乱れ撃ち。

そんなシナリオ頼んでないぞ。

こいつ…どうすりゃいいんだよ…。


「…頭…弱点は頭。」


またあの声だ。俺の頭に聞こえる声。

頭…?たしかに光魔法に直撃してきたときはハサミで顔を隠しながら突っ込んできたよなな。


「頭だ!頭を狙え!」


レイはこくりと頷くとその化け物の頭めがけて思いっきり魔法を放った。


「ジャベリングサンダー!」


雷雲がその化け物の周りを囲むと雷がその化け物の頭めがけて一斉に放出した。


部屋に響いたその化け物の叫び声。

そして魔物は消えていった。


「…あれ…勝った?…勝ったよ!やったぁぁ!!」


俺の方に飛びついてくるな。距離が近いぞ。


それにしても弱点を攻めれば一瞬だったな。

さすがにあれはボスじゃないな…多分。

そして次の部屋に行く為のドアから何か電子音が聞こえた。

きっと開錠の合図だろう。

分かりやすすぎる。


ヘルはにやけ顔でこっちを見ている。

何が可笑しいんだか。


「いや…二人ともさぁ…こんな状況でそんな抱き合わなくても…。さぁ…。」


…あ。

そういえばレイはまだ俺にしがみ付いていた。

…って…そろそろ離れましょうね。

嫌なんじゃないけど…ほら…あれ…不謹慎だ。

ちなみにヘルよ。抱き合ってるんじゃない。飛びつかれてるんだ。

それだけでも大分違うぞ。


「…ぇ…あぁぁあぁぁ!ちょっと!何でそんなにくっついてるのよ!こらっ!」


こらっ!じゃないでしょうが。

レイは俺から離れると照れてるような怒っているような顔で髪をさらっとなびかせて咳払いをした。


「さぁ!次に進もう!そうしようじゃないか!!!」


なんだかなぁ…。

横で微笑んでるヘルが何となく憎たらしい。


ドアは魔法もいらず,目の前に立つと自動で開いた。

そしてその先にはさっきまでの化け物より信じられない光景が広がっていた。


次の部屋へのドアは無い。

つまり終点だ。

そこにあるのは牢獄。

その中にいるのは教科書でも有名な偉人だった。

何百年も前にこの城に調査に来て以来行方不明。

何百年も前だぞ?教科書は間違ってたのか?

そこにいる人物は紛れも無くその顔写真と同じ人物。

年も取ってない。


アーガスだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ