表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

6:偽装

城の入り口は何百年も使われて無いような雰囲気を十分出している。

この城。アーガスが何百年も前に行方不明になり,調査が行なわれたが何も発見できなかった城。

教科書で取り扱われていたためある程度知識はある。

見た目からも分かるが3階建ての古風な城。

そんな城に転送された俺たちは何をすればいいのか分からなかったがとりあえず中に入ろうとした。


「固……っ」


そりゃそうだ。

ドアは全く動かない。

錆付いているんだろうか。


「二人とも邪魔邪魔。どいてどいて〜!今からこのレイ様が華麗な魔法を披露して…」


「いいからやれ。」


こんなコンビを結成してる場合じゃないんだ。早くしてくれ。

ヘルは城を見上げながらいつもどおりのハンサムスマイルだ。

なんでこんな状況でそのスマイルがでるんだか。


「フィアストーム!」


…あぁ…そういう…。

レイはドアを開けるんじゃなくて壊そうとした。

思いっきり。

腕輪もつけているレイの魔法は恐ろしい威力だった。

が。


「全く何も変わってないようだな。」


ヘルは冷静に言っているが驚く事にドアには傷一つ見当たらなかった。

レイが放った魔法はドアを確かに直撃していた。

それでも無傷のドア。


「ショ〜ックゥ…。」


レイはうなだれていたが俺も口からは溜息しか出なかった。

前途多難。

それも最初から。

だがその時,頭にまたあの声が聞こえた。

俺にしか聞こえないらしいその声は俺たちに助言してくれる。

敵か味方かは定かじゃないが,今は出来る事も無いので頼るしかないな。


「ドアの鍵穴に光魔法を当ててください。それだけです。」


それだけです。

簡単そうに言いますけど,あなたは誰ですか?

そんな問いかけも出来ないので俺は適当に光魔法を放ってみた。


「シャイン。」


俺にも魔法が使えるのが未だに感動だ。

今までの人生ではランク1も発動した事も無いんだからな。


そしてドアからカチャっと音がした。

いかにも 鍵が開きました 的な音だったな。

そしてドアを開けて中に進入した。…確かに城の中に入った。

そこには湖が一つ。

三階建て?階段なんか無い。

どこかの洞窟みたいだ。


「おいおい…どうなってるん…」


俺はやっぱりどうかしてしまったのか?


二人がいない。


さっき一緒に入ってきた二人が俺の横にいない。

そして入ってきたドアも無い。


「…。」


唖然。

俺は何かしたか?

ここはどこ?Where?

っか私は誰?

…落ち着こうか。


そんな事をしていると湖が沸騰したかのようにボコボコ音を立てている。

そして湖から一人の人物が現れた。

レイ?

お前は何をやってるんですか?

かっこいい登場シーンでも見せたかったか?


俺が安心して近づいていくとレイはいつもの…いつもの?

何か違うような気がする。

目の前のレイは微笑んでいる。

だが何か違う。…冷たい。


「イクリプス。」


「うぉっ!」


俺はいきなりの不意打ちに真横にすっ飛んだ。

目の前のレイが俺に襲い掛かってきた。

しかも放ったのは…闇魔法?

それも魔術書等は開いていない。

手で空中に文字を描いているだけだ。


「おい!レイか?聞こえてるか?」


そんな風に叫ぶ俺だが心では分かっていた。

こいつはレイじゃない。

いつもの笑顔じゃない。

俺の知ってるレイじゃない。

腕輪も…ついてない。


そいつは魔法で自分の周りに幾つもの光を集めだした。


「ディバインアロー。」


冷徹に単調で言い放った魔法。

俺は逃げているだけだ。

これじゃ今までと変わらないじゃないか。

せっかく俺にも使える魔法があって相手は本物のレイじゃない。

なら怯まなくてもいいだろ。


やってやるさ。


俺は魔道書を取り出し叫んだ。


「ライトニングバースト!」


一面に光が満ち溢れた。

俺も驚くほどの力が出て行った。

腕輪の能力増幅は凄いものなんだな。

そんな感心をあらわしていた俺の前には偽者のレイの姿は無く先ほどまでの湖が広がっていた。

そしてその湖の世界もガラスが割れるように崩壊していき,砕け散った。


そこにあったのは本来の城の内部と思われる構造。

そして横にいる二人。


「あ!目が覚めた!」


ヘルがいきなりそんな事を叫ぶもんだから俺もあせった。

目が覚めた?俺寝てたのか?


「馬鹿ぁぁ〜っ!」


そういいながら俺の視界から消えて俺の方に飛びついてきたレイは涙ぐんでいた。

距離が近い。ってか無い。


「なんで城に入った瞬間に倒れこむのよ!心配するでしょ!もう20分くらい寝込んでたわよ!…あぁ〜…もうっ!」


俺はそんな事になってたんですか。

いや,こっちはこっちでやばかったんだがな。

とにかくこの城は何かまずい。


先ほどの惨事を二人に話した。


「ほぇ〜…私強かった?」


えぇそりゃもう。

偽者とはいえ俺が魔法使えないままだったらやられてたね。

今ここにいないだろう。


「…で,お前だけがそんな事になった。お前やっぱり何かあるんじゃないの?」


ヘルは考えるような仕草をしていたが実際どうなんだ?

俺には何があるっていうんだ?

光魔法以外はぜんぜん使えないのに。

…でも俺だけに聞こえる声はあるし,その声が今まで助けになっている事は間違いない。


「…まぁいいとしてさ…これからどうする?」


結局城の中でやる事といってもまずは調査しかないだろう。調査なんて言えないただの見回り程度だろうが。

城の内装はさっきまでの湖とはかけ離れて古風な城そのもの。

壁に飾られてる絵は割れていたり,蜘蛛の巣がはられていたりと不気味だが。

この城は世界の保護対象物となっているため人の立ち入りは禁止。

まぁ,こんなところ観光名所にしようったって周りは不気味な草原と川。

来たいという気持ちが湧くのはどこかの熱心な研究科やマニアだろう。


見回りながらそんな事を考えていた俺だが,レイは何かを見つけたようでこっちに手を振っている。


「本っ!」


見りゃ分かる。

しかし相当古い本のようだ。

それに魔道書らしくは無い。

普通の本。

しかしいざページをを開くと意味不明な文字列が並んでいるだけだった。

どこの国の言葉だよ。


するとレイは魔道書を取り出しなにやら呪文を呟きだした。

そして数秒間沈黙していた俺とヘルだが,レイの詠唱が終わったときには緊張感も緩んでしまっていた。

どれだけの時間待っていたんだろう。

その時間の間ずっと魔法を詠唱していたレイもその本人特有の特殊能力のおかげで疲れてはいないようだ。

普通だったら今頃立てないくらいまで疲労してしまうさ。


「力を求めるもの,しかし儚くも散り行く姿,幾度も見た。あなた,これ求める故,耐え抜く自らの肉体と,遥か天空まで響く光の声。」


「……。」


なんですって?

むりやり翻訳しました的なその文章を読み終えたレイは頭の後ろに手をやりながら,俺のほうを餌を待つ犬のような目で見てきた。

俺は餌は持ってない。


「つまり,ヒント…なんだよな?」


「…多分…。」


結局具体的なことはつかめなかったがここには何かがあるんだろう。


「そういや…ここの地下って本当に無いのかな?アーガスは行ったんでしょ?」


レイは脱力感丸出しの声で言っていたが俺もそこは気になっていた。


地下ねぇ…地面掘り起こしてやろうか?


結局城を全て周って元の位置まで来てしまった。

変わったことといえば俺が偽者レイと戦った事ぐらい。


「…こ…。」


俺は自分で驚いた。

また頭の中で声が響いている。


「そこの下へ…。」


途絶えた。

そこの下?

つまりこの床下だよな?

…地面…掘り起こします?


「地下に行くには地面掘り起こすか?」


俺が言うとヘルは頭を抱えてやれやれといった面持ち。


「掘り起こすんじゃなくて壊す方が早い。」


「…そうかい。」


にんまりしているレイに破壊行為は任せておくか。


「ブレイクっ!」


地面に一メートルくらいの穴が開いた。

派手な破壊音等は無く,静かに穴が開いただけ。

そしてあった。

俺たちが行くべき場所だと思われる場所。

地下だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ