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5:転送 

結局,俺を含め3人はそこらへんの人間より特殊な能力があるそうだ。

なんかのRPGの主役か,俺たちは。


「この腕輪綺麗だよね〜♪私にピッタリ! 」


それはどうだか。

でも確かにこの腕輪は何か普通じゃない感じがした。

身に()けたときからどうも体の中を暖かいものが流れているような感覚がある。

俺の中で魔力が増幅でもしているんだろうか。

学校で先生に見せてあげたいね。俺の光魔法。


「それはそうと,お前光魔法の魔術書なんてそれしか持っていないだろ? 俺のでも持っとけ。ランク4までだけどな」


ヘルは光の魔道書を俺に渡してきた。

この不死身ハンサムが俺たちの盾となってくれる事でも期待しようか。


「えぇ〜ヘルからロスにはプレゼントがあるのに私には無いの? ちょうだい♪ 」


この娘は一回王女に礼儀作法を教えてもらってくれ。


「……」


黙りきったヘルだがその理由はレイに呆れたわけでも無かったようだ。

上空にあった太陽光が一切無くなってそこには真っ黒な武装軍隊が一瞬にして現れた。

しかも今度は魔物では無く人に見える。


ふと足元が揺れたかと思うと俺たちは一瞬でドーム状の建物の中にいた。

恐らくこの避難所にいる人間全員が入っているんじゃないだろうか?

とても大きくゆとりもある。

こんな事が出来るのは彼女だけだろう。


「皆さん。私です。エリルです。今現在この避難地区全域に突如謎の軍団が現れました。今精鋭部隊全軍で迎撃中です。皆さんはそこでおとなしく…」


そこまでで放送は終わってしまった。

その直後。

ドームが一瞬で消えてしまった。

砂場の城が崩れるかのように一瞬で。


「………」


三人全員が唖然とした。

上空にいた武装軍隊は一切残っていなく,元通りの空。

付近も荒れた様子も無くさっきまでの世界。避難地区そのもの。

そして目の前にいるのは10歳くらいの少女。


「どうしたのかな? お嬢ちゃん? 」


レイは全く平然と少女に笑みを見せている。

だがその少女は無表情のまま指を上空に指し


「あなた達は元の世界に帰りたい? 私はこれを届けに来ただけ。これを渡せば私の役目は終わる。三人の能力者によろしく。以上」


What? 何だって?

そんな事を思っていると上空から白い球体が降って来てレイの手の中に納まった。

そしてそれはすぐに魔道書に形を変えた。

今までに見た事も無い魔道書だ。

そしてその魔道書から少女の方へ目をやると少女はもういなかった。

何だったんだ?

三人の能力者によろしく?

一体誰が?


すると俺たちの前にまたしても王女がワープしてきた。


「またあなた方が一瞬でやってしまったんですか? 」


この前同様驚きの表情だったが俺たちは今起こった事をそのまま話して魔道書を見せた。


「…これはアーガスが行方不明になった城への転送キーです。3人までの」


またか…アーガス。一体彼が何回絡んでくるんだ?

しかもそんな転送キーを俺たちに渡してどうする?

…いやもう答えは明確かもしれない。

もしその少女が味方なら,この転送キーの先には事の元凶がいる。

そして三人と言うのは俺にレイ,ヘル。

つまり俺たちにその元凶を倒せ。

そう言いたいんだろう?


「きっとそういう事でしょう。しかしこれが罠である可能性も十分ありますので一度こちら側で精密調査してから……」


「めんどくさいから行っちゃおっか? 三人でさ」


俺とヘルの腕を掴んでまた無責任な事を言い出したのはもちろんレイだ。


「確かにのんびりしていられる状況ではないな」


ヘルもハンサムスマイルで同意しやがった。おいおい…待ってくれ…。


「大丈夫だって〜! だってロスもヘルもいるんだもん! もし罠でもすぐ解決できるよ! 」


その言葉は嬉しいんだか嬉しくないんだか。


「そんなわけで私たち行きます! 魔道書は持ってるし,転送は王女様,よろしくお願いしま〜す! 」


もうどうでもよくなってきた。

要するにもしこれが罠じゃなけりゃ,俺たちはそこで元の世界を改変しやがった悪玉を倒してこっちに戻ってくればいいんだろ?

って,帰りはどうするんでしょうかね?


「この転送キーには帰りの分も含まれていませんかね? 」


そういった俺の問いに王女は残念そうに


「片道……ですね」


「………」


レイもヘルも動きが止まった。

もしこれで帰れなくなったら俺たちは永遠にあっちの世界かよ。

それは断る。まだ俺だってしたいことは山積みだ。

この前買ったゲームだってまだクリアしてないぞ。


「…きっと大丈夫! ほら! ボスを倒したら自動的に移動させてくれるやつだよ! きっと! 」


なんのRPGやシミュレーションゲームだ。

いや,その前にあの少女は何だったんだ? どこから,どうやって来て,どうなった?


「…分からないです」


王女はまるで犬みたいにうな垂れてしまった。

やっぱり王女とはいえ疲れるものは疲れるんだろう。

RPGならHP回復の薬が落ちているはずだ。


「…あぁ〜もう! 私遠回りとか好きじゃないの〜っ! よっし決めた! 行こう! 三人で! 」


レイは何を決めたんだかガッツポーズをして俺とヘルの腕を再び掴んだ。

俺たちに選択権は無いんでしょうか?


「王女様! もうこのさいだからズバババっと転送しちゃってください! 帰りはどうにかなるってロスが言ってますので! 」


…は?ちょっと待て。俺は一回もそんなこと言って無いぞ。


「…分かりました。あなた方には最初から何かしらの役目が備わっていたんでしょうね。これも運命でしょうか。あなた方の無事を祈ります」


納得しないで下さいよ。

この二人はなんでこういうときに気が合うんだろう?

こうなったら魔王でもなんでも出てきてしまえ!

出来る限り抵抗はしてやるさ。


「罠だった場合,後の事は任せます」


冷静に嫌な事を言うな,不死身ハンサム。

だが確かに俺にも何か理由の不確定的な自信が少しあった。

俺にはレイもヘルもいる。

悪の元凶が何だ。

そんな気持ちがうっすらと俺の心にはあった。


「…やっちゃってください。もう覚悟しました。俺は元の世界に帰りたいんです。だからその世界をこの手で救います」


自分らしかぬ台詞だったなと思いつつも,自棄やけな気持ちで俺はいた。


「それでは行きます。ウユイエノンニンサ! 」


不可解な王女の魔法の声を聞いた後は周りの人たちの頑張れとかしっかりとかの応援の声が少し聞こえて何も聞こえなくなった。

体がゆっくり降下しているのが分かる。

横にレイとヘルもいる。

どちらかは俺の手を握っている。

このままどれだけ時間が過ぎるのか考え出したところで地面の感触が背中に伝わってきた。


「ここは? 」


俺は立ち上がってすぐ目の前に建物がある事に気付き,またその建物もどこかで見た事があった。

教科書に必ずといっていいほど載っている。


「これってあれだよね…?確か…」


レイが自分の頭をゆっくり撫でながら起き上がった。

そしてヘルはゆっくり立ち上がり城を眺めた。


「アーガスが行方不明になった城だ」

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