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3:覚醒

王女のいる場所は特殊な雰囲気で床までもがガラス張りで下は銀河のようになっていた。

そして目の前にいる王女がこの緊急避難所を作り出したのだ。

実に素晴らしいね。


王女は椅子にしとやかに座り優しそうな笑みで


「それで私に尋ねたいことというのはなんでしょうか?」


なんとも上品さが出ている声や動作で王女だということが実感できる。

俺たちが来るのも質問するのも予想済みのようだ。


俺は先ほどの声の事を王女にそのまま話した。

すると王女は静かに横においてあった魔道書を手に取り


「あなたの言いたい事は全て分かりました。私にもその記憶を見させてもらいますね。」


この人は何でも出来るのだろうか?俺の記憶を見るって…なんか恥ずかしいな。


「なるほど…確かに聞こえていますね。そしてその声は恐らく光魔法で作られた音声でしょう。声から判断すると老人でしょうか…。」


俺の記憶が分かっているかのように話す王女だが間違っている部分が一切無いため否定も出来ない。


「あの…その記憶を見る事が出来る魔法って…とっても凄いですよね?」


レイがうつむき加減で尋ねると王女はまたにっこり上品に笑みを浮かべ


「あなたも練習すれば出来るようになりますよ。」


俺はランク1風魔法も出来ないんですが。

そういえばこっちでは魔力もあがるんだったっけな。それも王女がやったってことはこの人は凄い能力があるんだろう。


「それで,こっちでは魔力が上がると聞いたんですが,実際どれくらい上がるのですか?」


ヘルが珍しく真面目な顔つきをしながら聞いている。


「人それぞれですがランク4くらいまでは誰でも使えるんじゃないでしょうか。魔道書が読めないのでは無理ですが。ただ個人差もありますし,己の内に秘めた魔力を特別な方法で一気に開放している物なのでその人の実力次第です。」


俺も使えるのかな?

早くやってみたい気持ちが少し湧いてきたがここは抑えて…。

…それにしてもいきなりこんな事になるなんて誰が想像出来た物か。


「これから私は我が国の精鋭部隊で事の元凶となっている相手を探り出し,倒しに行く予定です。その間城の軍のものにここの護衛を


任せ,私は元凶を倒した時点で元の世界に帰れるように努力します。他にもこの空間そのものにバリアを張ったり,防御姿勢は万全です。」


王女はしっかりとした顔でそう言うとまた笑みを浮かべて


「最善を尽くします。」


そう言って奥の間へと行ってしまった。




王座から森へ出て,一面の野原が広がる場所まで来た。

結局俺たちが出来るのはただ待つ事で,今は何も出来ない。


「どうせなら魔法の練習でもしようか〜。」


レイはそういうと先ほどのランク5の魔道書を出し,


「え〜っと…スプレッド!」


そう言うと突如地面から水が噴出しレイが指差した一転に水が一気に放出された。

そこの地面は水圧でかなりへこんでしまった。


「…すっごぉ〜い!!私こんなに威力ある魔法使えたよ!わぁぁ!!」


それはそれは。おめでとう。

適当に応答していたがヘルが突然上空に防御魔法を放った。


「危ないっ!!」


間一髪。上から火の玉が何発も降ってきていた。

何故?どうして?なんで?

疑問符がたくさん浮かんできたが上空を見ればすぐに状況は掴めた。

大量の魔物の群れ。あれはワイバーンか?

その大きな翼と姿はまるでドラゴンだ。


「なんでぇ〜?確か王女様がバリア張ってるはずなのに。」


レイは地面に座り込みながら呆然と上を見ていたが,立ち上がると


「よぉぉしっ!スプレッド!」


先ほどのように水柱が魔物めがけて飛んでいった。

その一撃だけで魔物は20匹くらい消滅していた。

こんな威力があるものなのか。

だがそれ以上に上空には魔物がいる。

空が見えない。

このままじゃまずい。

しかし間もなく王女の言った精鋭部隊らしき人たちがどこからともなく表れ,各自の召喚獣や魔法などで魔物を撃退し始めた。

そしてこの空間全体にアナウンスが響いた。


「私です。エリルです。今この避難地全体に魔物が約15億匹発生しています。私のバリアも破られてしまったようです。撃退は我が国の精鋭部隊に任せて皆さんはB−12地区に非難してください。そこに集中結界を張っています。繰り返します…」


その地区まではここからそんなに遠くない。だが見たところ精鋭部隊といえどもこの数の魔物には苦戦しているようだ。

それに15億という数字の魔物が出現するとは…。


「ロス!早く!」


俺の手を引いたレイは召喚で大きなサーフボードのような姿に変形した召喚獣を出し,そいつに乗ると一気に加速した。

レイの召喚獣は好きな形に姿を変えられる軟体生物のような生き物でスライムとかそんな風に呼ばれている。

こいつは何も喋らないのでなんだかよく分からないがレイに可愛がってもらっているらしい。

羨ましいやら何やら。

無表情に線一本の目と口に半透明の濃い青の体でスライムは進んでいた。


そのスライムは低空飛行で目的の避難地区へ移動していたが,その移動中にまたしても頭の中にあの声が響いた。


「右下…12秒後に右下…」


まただ。これにも従っておくべきなのだろうか。

12秒後…もうすぐ来る…3…2…1…

右下を見ると何やら真っ白な本が落ちていた。

俺がそれを救い上げるとそれは魔道書のようだった。


「それって…光魔法の魔道書…?」

レイが言うにはそうらしい。


「見た事も無い種類だな。なんでそこにあるって分かったんだ?」


ヘルは不思議そうな顔をしていたがまた声が聞こえた事を言うと,


「お前…何かの力があるんじゃないか?その魔術書だってお前使えるかもしれないぞ?…いや,スマン。それは無いな」


魔術書には1ページ目に呪文が書いてあるだけで他のページは全て白紙だった。

物は試しに上空に魔法を唱えてみた。


「…ライトニングバーストっ!」


唱えた瞬間俺の周りが全て真っ白になったかと思うと上空のワイバーンが全て消滅していった。


…そんなアホな…。

俺を含め全員が唖然とした。

俺が使ったのは光魔法ランク10の魔法だった。


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