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最弱弓術士、全距離支配で最強へ  作者: ルベン


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第9話:Cランク昇格への道と振動弓術の萌芽

 1. 魔力矢の実戦投入:アイアン・ゴーレム討伐


 Cランク昇格試験の資格を得るため、リアンは難易度の高い討伐依頼を選んだ。


『旧王都地下遺跡に出現したアイアン・ゴーレムの駆除』。


 アイアン・ゴーレムは、その名の通り、全身が硬質な魔力を帯びた鉄の装甲で覆われている。物理攻撃耐性が非常に高く、通常の剣士の攻撃や、低威力の魔法すら弾く厄介な魔物だ。


「アイアン・ゴーレムは、高火力の魔法か、特殊な魔剣でなければ装甲を貫通できないわ。これが、あなたの『魔力矢』の真価を試す最高の機会よ」


 マリナがリアンに言った。


 リアンは静かに頷いた。


「ダリウスさんやセシリアさんと組んでいた時、ゴーレムは常に火力の壁でした。しかし、今は違う」


 遺跡の深く。リアンは、目の前に立ちはだかる三体のアイアン・ゴーレムと対峙した。その巨体と鈍い鉄の輝きは、圧倒的な防御力を物語っている。


 リアンは弓を構え、『超感覚集中フォーカス・ゼロ』を発動させた。


 ジー……


 彼の体内の微細な魔力が、『ストーム・ウィスパー』を伝って矢の先端に収束していく。矢の先端は、純粋な青白い魔力でコーティングされ、『魔力矢アロー・エンチャント』へと変化した。


 リアンは、ゴーレムの『心臓部(魔力炉)』の位置をナノ・サイトで正確に特定し、矢を放った。


 ヒュン! ドォン!


 矢は音もなく、一瞬で距離を詰め、ゴーレムの装甲に直撃した。


 通常の矢であれば、装甲に弾かれ、火花を散らすだけだ。しかし、魔力矢は違った。装甲表面の魔力バリアを青白い光が一瞬で打ち破り、矢は硬質な装甲を溶解させながら、深く、深く突き刺さった。


「ぐおおお……」


 ゴーレムから、人間のような苦悶の唸り声が漏れた。魔力矢は、その装甲を貫通し、内部の魔力炉に直撃。一体目のゴーレムは、数秒の内に動きを停止し、ガレキへと崩れ落ちた。


「すごい! 一撃よ! 魔法使いの強力な詠唱なしで、一瞬で!」


 マリナは驚きを隠せない。


 リアンの『魔力矢』は、従来の魔法のように広範囲を攻撃するわけではない。その代わり、『超精密な一点貫通』に特化していた。彼の集中力と、ストーム・ウィスパーの伝導率によって生み出された、弓術士にしか使えない火力だった。


 残る二体は、仲間が倒れたことで警戒心を高め、連携してリアンに迫る。


 リアンは冷静だった。彼は、一体目を牽制しつつ、二体目が動く際に生じる『装甲の僅かな軋み(きしみ)』を狙い、リフレクト・エッジを放った。矢は壁に跳弾し、二体目のゴーレムの『首の接合部』を狙う。


 そして、その矢がゴーレムの注意を引いた一瞬で、リアンは三体目のゴーレムに魔力矢を放ち、その魔力炉を破壊した。


 二体目のゴーレムは、接合部に受けた衝撃で動きが鈍り、リアンのゼロ・ブレイク(ボウ・ブレード)の餌食となった。近接で足元を制され、完全に無力化されたゴーレムに、リアンは魔力矢を浴びせ、討伐を完了した。



 2. 振動弓術:防御の極致


 アイアン・ゴーレム討伐の成功は、リアンのCランク昇格を決定づけた。彼は、従来の弓術士の弱点であった『火力』を克服したのだ。


 しかし、奥義書には、まだ未習得の究極技術が残っていた。『振動弓術』、それは弓の弦を振動させ、防御と攻撃を行う技術だった。


「マリナさん、この技術は、肉体の防御力を無視して攻撃してくる、上位の魔法や、特殊な魔物に対応するために必要です」


 リアンは、訓練場で弓の弦を一本指で弾いた。


 ビィィン……


 通常の弦の振動とは違い、リアンの『集中力』が介在することで、弦の振動が『音』だけでなく『風圧』を伴って周囲に広がるのが分かった。


(弦の振動数を、魔物の攻撃の『波長』に合わせられれば、攻撃を無力化できる。しかし、振動数が少しでもズレれば、その衝撃は全て自分の肉体に返ってくる)


 リアンは、マリナに依頼し、小さな魔力の球を連続で放ってもらう訓練を開始した。


 リアンは魔力の球を避けるのではなく、弦を弾く。


 パァン!


 一回目の試行。振動数が合わず、魔力の球は弦をすり抜け、リアンの肩に直撃した。


「ぐっ!」


「リアンさん! 大丈夫!?」


「問題ありません。もう一度」


 リアンは、ナノ・サイトで、飛んでくる魔力の球の『魔力粒子の振動数』を捉える。その情報を脳内で瞬時に分析し、ストーム・ウィスパーの弦の張力を指先で微調整する。


 ピィィィン!


 次の瞬間、リアンが弦を弾いた。弦の振動は、飛来する魔力の球の波長と完全に同調した。


 魔力の球が弦の前に到達した瞬間、弦から放たれた『音と風圧の衝撃波』が、魔力の球の構造そのものを乱した。


 シュウ……


 魔力の球は、リアンに触れることなく、煙のように霧散した。


「成功したわ! 信じられない……」

 

 マリナは目を見開いた。


 リアンは額の汗を拭った。この技術は、彼の集中力の限界を試すものだった。一瞬でも集中が途切れれば、自爆に等しい。


「この振動弓術を応用すれば、近接戦闘で『音の防御壁』として機能させ、敵の物理的な武器の衝撃すら無力化できるはずです。それが、奥義書に記されていた『音速のソニック・シールド』の基礎だ」



 3. Cランク昇格試験への準備


 修行を終えたリアンは、ギルドに戻り、Cランク昇格試験への正式な参加を申請した。


 ギルドマスター・バシュラは、リアンの申請書を静かに見つめた。そこには、アイアン・ゴーレムの討伐報告と共に、「魔力矢による炉心一撃」という驚くべき記録が添付されていた。


「もはや、お前がCランクの実力者であることは疑いようがない。だが、Cランク試験は単独ではない。パーティメンバーとの共同ミッションだ。お前は、『役割の破壊者』として、再びパーティを崩壊させるつもりか?」


「俺は、パーティを崩壊させるつもりはありません。俺の全距離支配の弓術は、パーティ全体の『戦術の穴』を埋めるためのものです。試験では、俺の戦い方が、いかに他のメンバーの力を最大限に引き出すか、証明します」


 リアンは力強く答えた。


 バシュラはリアンの真摯な眼差しに、何かを決意したように頷いた。


「よかろう。お前の昇格試験は、全ギルドが注視する大規模な共同討伐ミッションとする。剣士、魔法使い、治癒師、そして弓術士。ヒエラルキーの異なる実力者たちが集う。そこで、お前の弓術士としての真価を証明してみせろ」


 リアンの冒険者人生は、大きな転換点を迎えようとしていた。彼は、最弱職から脱却するだけでなく、従来の冒険者社会の『常識』そのものを塗り替える戦いに挑むことになる。

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