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最弱弓術士、全距離支配で最強へ  作者: ルベン
season1

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24/29

第24話:集中力の限界と突破

 1. 霊峰の洗礼:蝕まれる命


 反転迷宮を脱出したリアンとマリナを待っていたのは、安息ではなく、さらなる絶望だった。


 リアンの腕の中で眠るマリナの肌には、不気味な紫色の紋様が浮かび上がっていた。組織が仕掛けた「魔力汚染」。それは彼女の生命力を魔力に変えて外部へ垂れ流し続ける、残酷な呪いだった。


「……浄化の雫。この霊峰アイギスの頂にある聖域なら、彼女を救えるはずだ」


 リアンは、激しい吹雪が吹き荒れる極北の霊峰を見上げた。


 身体は反転迷宮での連戦でボロボロになり、脳は超感覚集中フォーカス・ゼロの多用で焼き切れるような痛みを訴えている。だが、リアンに立ち止まる選択肢はなかった。


 背中にマリナを背負い、一本の綱で体を固定する。


「マリナさん……絶対に、死なせない」



 2. 限界の淵:ノイズに染まる世界


 霊峰の中腹。そこには、円卓が放った追撃隊――自動人形オートマタの軍勢が待ち構えていた。


 彼らは感情を持たず、ただ正確にリアンの消耗した部位を狙って、冷酷な魔力弾を放ってくる。


「……っ!」


 リアンは弓を構えた。だが、その視界はこれまでにない異常をきたしていた。


 ナノ・サイトを起動しようとすると、視界の端から砂嵐のようなノイズが走り、空間の距離感が狂う。


(脳が……拒絶している……!? 集中しすぎた代償か)


 0.1ミリの隙間を射抜いてきた精密さは失われ、放たれた矢は人形の装甲を虚しく弾く。


 敵の動きが速く見える。予測が追いつかない。


 これまで「万能」だと思っていた自身の集中力が、限界という壁にぶち当たり、崩壊を始めていた。


「あ……ああ……!」


 迫りくる自動人形の刃。リアンは回避が遅れ、肩を深く切り裂かれた。


 地面に膝をつき、激しい眩暈に襲われる。


 視覚はぼやけ、聴覚は耳鳴りに占拠された。


 最悪なことに、背中のマリナの鼓動が、一段と弱くなっているのが伝わってきた。


(俺に……才能がなければ。ただの『弓術士』でしかなかったなら、彼女をこんな目に遭わせることもなかったのか……?)


 絶望の淵で、リアンは初めて己の「力」に疑問を抱いた。



 2. 魂の再会:叔父の言葉


 意識が遠のく中、リアンの脳裏に叔父アルスの声が響いた。


『リアン。お前は「視る」ことに頼りすぎている。目で見えるもの、頭で計算できるもの……それは世界のほんの一部だ』


 幼い日の記憶。叔父が弓の弦を張り替えながら、穏やかに語っていた。


『本当の集中とは、世界と「一つ」になることだ。自分と世界の境界線を消せ。そうすれば、お前が動くのではなく、世界がお前を動かしてくれるようになる』


 リアンは、血に濡れた手で、雪を握りしめた。


 これまで彼は、自分の「化け物じみた集中力」という圧倒的な個の力で、世界を捻じ伏せてきた。


 だが、今の彼に必要なのは、支配することではなく、「受け入れる」ことだった。


(支配するんじゃない。抗うんじゃない。風を、雪を、マリナさんの鼓動を……この痛みさえも、俺の一部だ)



 2. 覚醒:超集中状態オーバー・フォーカス


 リアンは、閉じていた目を開けた。


 ノイズは消えていなかった。だが、そのノイズのなかに、新しい「理」が見えていた。


 物理的な像はもはや重要ではない。


 風が雪を運ぶリズム。自動人形の内部で魔力が循環する規則性。


 それらすべてが、一つの巨大な「流れ」としてリアンの魂に流れ込んでくる。


(ああ……そうだ。俺が射るんじゃない。矢は、最初から「そこ」にあるべきなんだ)


 リアンは、立ち上がった。


 超感覚集中をさらに深化させた未知の領域――『超集中状態オーバー・フォーカス』。


 彼は弓を引いた。弦を引き絞る音すらしない。


 放たれた矢は、吹雪の風に逆らうことなく、むしろ風の力を借りて加速し、複雑な螺旋を描いた。


 ドォォォォン!


 一本の矢が、一直線に並んだ五体の自動人形の「動力核」を、まるで繋がれた糸を断つように正確に貫いた。


 ノイズにまみれた視界の中で、リアンは「本質」だけを射抜いていた。


 もはや計算はいらない。


 リアンが思うだけで、矢は空中に描かれた必然の軌跡を辿る。


 これが、叔父がたどり着けなかった、弓術士の真の到達点。


「行こう、マリナさん。頂上は、すぐそこだ」


 追撃隊を全滅させたリアンは、傷だらけの体を引きずりながらも、揺るぎない足取りで聖域へと歩みを進めた。


 その瞳は、もはや最弱職の冒険者のものではなかった。


 運命を、そして己の限界さえも「調和」によって超越した、唯一無二の存在へと進化を遂げていた。

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