91.ゴーレムが働く村
翌朝、迎賓館へ迎えに来たのは、ふたたび村長とアイだけであった。
オーロラ王女は、アレンの所在を尋ねたが、アイからは今日も「体調不良」のため参加できないと伝えられた。
王女は前日の熱意を押し殺し、視察の時間だと割り切った。
馬車に乗り込もうとする王女を、村長が制した。
「殿下。村の視察は、すべて歩きで十分可能です」
村長の説明によれば、エテルナ村とは中央の集会所を中心として半径一キロほどのエリアにコンパクトに集約されたエリアなのだとか。
オーロラ王女は、にわかには信じられなかったが、徒歩で視察を開始した。
最初に案内されたのは、村の外苑エリアにある農業プラントだった。
そこでオーロラ王女は、長い時間をかけ、そのプラントを観察した。
一番驚いたのは、エルナという若い農家の娘がひとりで農業プラントを仕切っていたことだった。
正確には、彼女が多数のゴーレムを従え、全ての田畑を一元的に管理していた。
エルナというこの娘はここを仕切っているだけあって、農業プラントについてどんな質問にも正確に答えることができた。
彼女の田畑の全てを統一して管理し、効率を極限まで高めているという話は、王都の貴族農園ですら聞いたことがない発想だった。
王女は、その合理性の深さに驚きを隠せなかった。
今はちょうど一部の作物が収穫期を迎えていた。
しかし、その収穫は全て収穫用ゴーレムが担い、そのまま小型の飛行ゴーレムが倉庫へ保管し、さらに中型の飛行ゴーレムがルベールへ輸送までを行っていた。
王女は、ゴーレムたちの完璧な作業を立ち止まって見つめた。
そこには人の姿は全く必要なく、この村の人々が労働から完全に切り離されている事実を、はっきりと理解した。
昼時に差し掛かると、多くの村人たちが中央の集会所へと集まり始めた。
村長に誘われ、オーロラ王女も集会所へ足を踏み入れた。
そこでは食事の配給が行われており、皆が一同に同じ食事を囲んでいた。
提供されているのは、村の農業プラントで採れた作物がメインの質素な献立だった。
オーロラ王女も配給食を皆とともに味わった。
その野菜や穀物の味は非常に良く、新鮮さと旨味が凝縮されていることがすぐに分かった。
王都ではありえない平等で質の高い食事風景に、王女は再び衝撃を受けた。
食後、王女は村の温浴施設や交流を目的とした共有施設を、さらに時間をかけて見学した。
村人たちの顔は、不満や疲労の色はなく、誰もが穏やかで充足した笑顔を浮かべていた。
王女は、この村の豊かさが単なる技術革新だけでなく、人々の生活満足度に直結していることを、この長い視察を通して徐々に実感していった。




