74.信頼の芽生えと新たな道
暴走を鎮静化させたアレンは、安堵の表情で崩れた機械の残骸を見つめていた。
その隣には、同じく泥にまみれ、息を切らしたシルヴィアが立っていた。
彼女の鋭い眼差しは、もはや警戒心ではなく、驚きと感謝の念を宿していた。
シルヴィアは言葉を失い、ただアレンを見つめていた。
アレンの行動は、取引のためでも、侵略のためでもない。
ただ目の前で困っている者たちを助けたいという純粋な親切心だけだった。
彼女が抱いていた人間への不信感は、アレンの揺るぎない善意によって根底から揺らいでいた。
「おまえの望むとおり、希少金属を渡そう。」
シルヴィアは、族長としてのプライドを捨て、アレンに深々と頭を下げた。
二つの文明が、互いの価値観を理解し、共生へと歩み始める、歴史的な瞬間だった。
アレンは、早速採掘用ゴーレムを投入し、希少金属の採掘を開始した。
効率的に採掘された希少金属は、ゴーレムによって次々とエテルナ村へと運び込まれていった。
エテルナ村では、アレンが持ち帰った希少金属のおかげで、介護用ゴーレムの量産のメドが付いた。
アレンはお礼として、農業プラントで生産した新鮮な農作物を魔族の都に提供した。
魔族たちは、ゴーレムが作った野菜や果物に驚き、歓声を上げた。
彼らは、人族の錬金術や古代技術が彼らの生活を豊かにしてくれることを実感し、その不信感は和らいでいった。
魔族の都では、アイが古代技術の分析を行い、システムの完全停止に成功した。
その過程で、彼女自身も忘れていた古代文明に関する情報を取得した。
それは、過去になぜ古代文明が滅びたかの真実だった。
平穏になった魔族の村で、久々にシルヴィアとフィオナが会話をしていた。
「アレンは、日頃は軟弱な感じのイメージなんだが、真剣になった時に少しだけ言葉が乱暴になるんだ。そのギャップがなんだかいいんだよ」
アレンを語るフィオナを見て、シルヴィアは妹が彼に好意を抱いていることに気がついた。
「ちなみにフィオナ。魔族と人族は、交配が可能なことを知っているか?」
突然の姉の直球に飲んでいたお茶を吹き出すフィオナ。
「な、何を言っているんだ?」
顔を赤らめるフィオナを見て、ひさびさに族長から姉に変わることができたその時間をシルヴィアは楽しんだ。




