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スローライフはもうあきた  作者: まいぷろ
第1章:宮廷からの逃避
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6.最初の創造と小さな革命の兆し

エテルナ村での生活は、アレンに穏やかな安らぎをもたらしたが、日々の不便が彼の知的好奇心を刺激する。


毎朝の冷たい井戸水、重労働な洗濯、そして小屋の裏に積み上げられた大量の薪。これらの単純な作業は、宮廷での閉塞感とは異なる、新たな不満となってアレンの心を再び重くした。**このままでは、ただ逃げてきただけの自分と何も変わらない。**そんな思いが、彼の内にくすぶる情熱に火をつけた。


彼はふと閃いた。この村での不満は、すべて錬金術で解決できるのではないか? 宮廷でのしがらみやプレッシャーから離れた今だからこそ、自分のためだけに錬金術を使える。


まず、彼は簡単な魔導具の試作から始めた。最初に手をつけたのは、薪割りだ。近くの森で適当な素材を探し、小さな自動薪割り機を作り上げた。それは、薪をセットすると内部の魔石が震え、斧の刃が自動的に振り下ろされるという単純な仕組みだった。


試運転で完璧に薪が割れるのを見て、アレンは久々に心の底から達成感を感じた。この小さな成功が、彼の自信を少しずつ取り戻させていく。


次に作ったのは、井戸の水を汲み上げる小型の魔導ポンプだ。井戸の底に沈めると、魔石の力で自動的に水を吸い上げ、バケツに注いでくれる。これで重いバケツを何往復も運ぶ必要がなくなった。アレンの周りの不便が、一つずつ魔法のように解消されていく。


「わあ、すごい! これなら掃除も楽になるのね!」


いつものように手伝いに来たリリィは、新しく作られた道具に興味津々だった。彼女は目を輝かせながら魔導装置の仕組みに興味を持ち、アレンの手伝いをしながら無邪気な笑顔を見せる。


「これはどうやって動くの?」


リリィの純粋な問いかけに、アレンは楽しそうに仕組みを説明した。宮廷では誰も見向きもしなかった彼の技術に、リリィの好奇心は、アレンの創造欲をさらに刺激する。


彼は小さく微笑みながら思った。この村での退屈な生活も、錬金術を通せば、少しずつ自分の世界に変えていける。


宮廷の重圧から逃げ出したはずのアレンだったが、彼は再び錬金術に没頭し始めていた。それは誰かに命令されたものでも、義務でもない。ただ純粋に、自分の生活をより良くしたいという欲求からくるものだった。


こうして、彼の個人的な「小さな創造」は、やがて村全体を巻き込む壮大な計画へと繋がる、静かな伏線となったのだった。

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