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スローライフはもうあきた~錬金術と古代技術を組み合わせて誰にもできないことをする~  作者: まいぷろ
第10章:石板が導く領地の夜明け

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52.領主との謁見と新たな計画

エテルナ村を出て村長とアレンは、馬車の揺れに身を任せながら、領主館へと向かっていた。


道中、隣村のリーヴェと、さらにその隣にある農耕村グロリアに宿泊していた。

どちらの村も、以前のエテルナ村ほどではないにせよ、活気を失いつつある寂れた村だった。

アレンの目に映る疲弊した景色は、この領内の問題を見せつけられているようだった。


領主館の質実剛健な造りは、この領地を治める者の意志を雄弁に物語っているようだった。

門をくぐり、石畳の中庭を横切ると、重厚なオーク材の扉が二人の前に立ちはだかる。

扉の左右には、威圧感のある兵士が直立しており、その張り詰めた空気に、村長はごくりと唾を飲み込んだ。


案内された謁見の間は、窓から差し込む光が埃をきらめかせ、壁には巨大な鹿の角や剣が飾られている。

村長は緊張していたが、アレンは過去の経験から、この種の儀式的な緊張感に慣れていた。


やがて、レオンハルトが入室してきた。

彼は若く、鋭い眼差しをしていたが、その表情は好奇心に満ちている。


レオンハルトはアレンの錬金術が辺境の村の生活を向上させたことを称賛し、その噂が自身の領地を越えて広まりつつあることを世間話のように語った。


村長は安堵の表情を浮かべるが、アレンは気を抜かない。

この種の褒め言葉は、次に続く厳しい要求の前置きに過ぎないことを、彼は知っていた。


そして、その予感は的中する。


「アレン殿の才能は、この領地にとってかけがえのない財産だ。そこで、さらなる発展のため、向こう一年でエテルナ村の税収を倍増させ、新たな雇用を創出してほしい」


レオンハルトの言葉に、村長は絶句した。

村長は、諦めにも似た表情で「それはムリでございます」と口を開こうとした時、アレンはそれを制した。


「領主様、そのご依頼ですが、結果だけでしたら実現は可能です」


レオンハルトは驚き、その鋭い眼差しがアレンに注がれる。

「ほう、それはどういうことだ?」


「ここまでの道中、私たちが宿泊したリーヴェ村とグロリア村へエテルナ村の技術を提供すれば、全体として税収を倍増させ、雇用を作り出すことができます」


レオンハルトがその意図を問うと、アレンは言葉を継いだ。

「ここからはこの石板のアイに説明させていただけますでしょうか」


そう言うとアレンは石板をレオンハルトの方へ向けた。

「レオンハルト様。お初にお目にかかります。アレン様の石板のアイと申します」

流暢な言葉を発する石板にレオンハルトは一瞬は驚いたが、すぐに持ち直して質問を続けた。


「アイとやら。エテルナ村で税収を倍増させ、雇用を創出しない目的は何だ?」


アイは答えた。

「エテルナ村のがこれ以上発展すれば、やがて王都の目に留まり、自治権を与えられ、領内からの独立を促されかねません。そうなれば、領主様はせっかく育った金の卵を失うことになります」


レオンハルトは黙ってアイの言葉に耳を傾ける。

「しかし、複数の村が協力して潤えば、利益が公平に分配され、村々の間に争いが起きにくくなります。そして、領地全体が活性化すれば、王都から不用意にちょっかいを出されることもなくなり、領主様の権益は守られるのではないでしょうか」


レオンハルトは十年ほど前の商業都市ルベールの独立を思い出していた。

アイのいう通り、エテルナ村のこれ以上の発展には王都が関与してくる可能性があった。


「なるほどな。たしかにその可能性はあるが、しかし、腑に落ちない点がある」

レオンハルトは純粋な質問をぶつけた。

「エテルナ村からすればその提案にどんな得があるというのだ?」


そこからはアレンが説明を引き継いだ。

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