41.新しい村の構想
エテルナ村の集会所は、村人たちの期待と静かな緊張感に満ちていた。全員が立ち会うために集まり、長年村を率いてきた村長が壇上に立った。彼は村人たちを見渡し、深々と頭を下げた。
「皆さん、今日は集まってくれてありがとう。今日は、私たちのこれからの暮らしについて、皆で話し合いたい。まず、そのきっかけとなる話を、アレン君から聞かせてほしい。」
村長の言葉は、村人たちの間に漂う戸惑いを静かに鎮めた。続いて壇上に立ったアレンは、村人たち一人ひとりの顔をじっくりと見渡した。
「皆さん、今日は私たちの村の、そして皆さんの未来について、少しお話をさせてください。」
アレンの声は、静まり返った集会所に響き渡った。
「この村での生活は、素晴らしいものです。しかし、同時に多くの大変なこともあります。私たちは、一日の大半を水汲み、薪割り、畑仕事、家畜の世話に費やしています。毎日毎日、同じ作業に追われ、腰を痛めたり、休む暇がなかったりすることもあります。」
アレンは、スローライフの美しさを認めつつも、その裏にある生活の苦労を指摘した。若者たちは、日々の苦労を言い当てられたように深く頷く。彼らは、アレンの言葉が自分たちの抱える現実の課題を理解していることに、信頼を覚えた。
「そして、私たちの村は、それぞれの家が遠く離れているために、村全体の維持にも多くの手間とお金がかかっています。村には複数の井戸や水路がありますが、それらすべてを管理し、手入れするだけでも大変な労力です。バラバラに暮らしているからこそ、想像以上に大きな費用と人手がかかっているのです。そこで、新しい村の構想を皆さんに話したいと思います。村人たちが一か所に集まって暮らすことで、このムダな手間とお金をぐっと減らすことができるんです。」
アレンはここで一度言葉を切り、村人たちの反応をうかがった。多くの村人がその点に気づいていなかったようで、ざわつきが広がる。
「新しい村では、住む場所も暮らしの仕組みも一つにまとめます。そうすれば、皆さんの暮らしは大きく変わるのではないでしょうか。たとえば、皆さんが毎日している水汲みは、各家庭に水を届ける水道に変わります。また、夜を照らし、暖をとるために毎日必要な薪割りは、安全で安定した電気に変わります。これで、皆さんの生活はずっと楽になるのではないでしょうか。さらに、皆さんの新しい住まいも、すでに建設が完了しています。住居にかかる家賃や修繕費、そして毎日のご飯にかかるお金の一部を村が負担します。そうやって浮いたお金を、皆さんの暮らしのために使うのです。」
アレンは、この言葉に力を込めた。
「皆さんにお伝えしたいのは、これまで大変だった毎日の作業の時間を、皆さんの大切な『暮らし』をより豊かにする時間に変えるということです。そうしてできた時間を、家族と過ごしたり、孫に昔話を語って聞かせたり、趣味の木工細工に打ち込んだりするのに使ってほしいのです──それが、この計画の目的です。」
若者たちの間から、賛同の拍手や感嘆の声が自然と湧き上がった。彼らにとって、この計画は単なる生活の改善ではなく、未知の可能性に満ちた、新しい人生の始まりを意味していた。彼らはアレンの言葉に熱心に耳を傾け、その未来のビジョンに心を躍らせた。
しかし、後方の席に座る高齢者たちの表情は硬く、不安と不満が入り混じっていた。彼らは、アレンが語る未来を理解しようと努めていたが、その言葉はあまりにも現実離れしていた。
長老格のハルカは、アレンが語る「生活が楽になる」という言葉に、深い違和感を覚えていた。
「楽になるというが、それはつまり、私たちの自給自足の暮らしを奪うということかい?」




