36.建設開始と高まる村人の好奇心
ゴーレムたちによる建設は、アレンの予想をはるかに超えるペースで進んだ。5体のゴーレムは、まるで熟練した職人のように、アイの指示に従って正確かつ迅速に動く。運び込まれた大量の資材は、彼らの手によって瞬く間に、建物を建てるための基礎や壁へと姿を変えていった。しかし、作業量が増えるにつれて、5体のゴーレムだけでは限界があることが明らかになった。
「アレン様、このままでは作業が遅延します。追加でゴーレムを生産する必要があります」
アイからの進言を受け、アレンはさらに5体のゴーレムを製作した。合計10体となったゴーレムたちは、さらに効率よく作業を進めていく。
村人たちは、この異常な光景にただただ目を丸くするばかりだった。彼らはゴーレムの存在自体は知っていたが、これほど精密で自律的に動く人型のゴーレムは見たことがなかった。ゴーレムたちは決して疲れることなく、正確無比な動きで作業を続ける。その姿はまるで、彼らの生活を豊かにするための魔法が、今まさに目の前で現実のものとなっているかのようだった。
「いったい、アレン様は何をしているんだ?」
「あの人型のゴーレム、まるで生きているみたいだ……」
そんな声が村のあちこちで囁かれ始めた。最初は、アレンが一人で何か突飛なことを始めた、と冷ややかに見ていた者たちも、その驚異的な作業効率を目の当たりにして、次第に興味を抱き始める。特に、村の中心にある広場が、たった数日で完璧な平地へと姿を変えたとき、村人たちの間に広がっていたのは戸惑いではなく、純粋な驚きだった。
彼らはまだ、この建設が自分たちの未来にどう繋がるのかを知らない。それでも、日々変化していく建設現場の様子に、村人たちの心は少しずつ、しかし確実に動かされていた。村の若者たちは、ゴーレムたちの動きを真似てみたり、どんな魔導技術が使われているのかを熱心に議論し始める。子供たちは、ゴーレムが掘り出した土の山を遊び場にし、建設現場はいつしか、村の新たな話題の中心となっていた。
しかし、アレンはまだ、村民に詳細を説明するつもりはなかった。彼は、この建設が完璧なものになるまで、一人で、いや、アイとゴーレムだけで成し遂げようと決意していた。王都での苦い経験が、アレンの心を閉ざさせていたのだ。彼は、計画が途中で頓挫したり、村人の期待を裏切ってしまうことを恐れていた。だからこそ、彼は誰にも頼らず、すべてを一人で背負い込もうとしていた。
その結果、アレンの負担は日に日に増していく。建設現場の監督、ゴーレムのメンテナンス、アイへの細かな指示。そして、村人からの好奇心に満ちた質問への対応。アレンは、全てのタスクを一人でこなそうと奮闘していた。しかし、アレンの体と精神は、すでに限界に近づいていた。




