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国教会の司祭

──「ミーティア・ハスク」前庭 10/03/夜


「パドレはね」

「国教会の司祭なんだよー」


 館内まで歩くあいだ私はサフィの紹介を聞いていた。


「へー」


「ヒスイ様のような素晴らしい聖女の皆さまのご活躍を」

「人々に伝道する役割を仰せ付かっております」


「初代聖女は?」


「もちろん初代様の伝説を布教することも大切ですが」

「この国では、もはや伝説を知らない国民はいません」

「連綿と初代様の御業(みわざ)を語り継ぐことも重要ですが」

「我々が説く必要がないほど、その伝説は人々に浸透しているのです」


 パドレはニコニコと微笑みながら語り続ける。


「おもに私は市井の人々に現在の聖女の素晴らしさを説き」

「宣教師たちが国外で初代様の伝説を布教しています」


 最初は頼りなさそうな印象だったがパドレは司祭というだけあって、よどみなく喋っていた。


「ちなみに民衆に一番人気の聖女って誰?」


「初代様は揺るがぬ信仰の対象です」

「誰もが敬い、崇め奉っています」

「ですが現代においては貴女様を差し置いて他にいないでしょう」


 はぁ……そうかい。


「今や町人の子どもですら貴女様に憧れ」

「不敬ながらも魔王討伐の真似事をして戯れているのですから」


「お前らの宣伝の賜物(たまもの)だな」


「恐れ多きお言葉」


 パドレは私の皮肉にも一切動じず礼も失さずに返答した。


 さっきはお嬢様とか言ってた私を瞬時にここまで神格化の対象として見れるとは恐れ入ったね。


 こいつも一種の化け物だな……。


「でも私が一番人気とか言ったらヤバいんじゃないの?」

「皇妃も聖女なんだから」


「エミカ様が最初に伝説を残された地では」

「エミカ様への信仰が強く根付いています」

「敬われるべき場所で敬われるべき聖女が信仰を受けているのです」


 伝説って、お前。


 今の皇妃はまだ30過ぎてないくらいなんだから、そこまで伝説っていうほど昔の話じゃないだろ。


 こいつらのやってることは誇大広告も甚だしい。


「リセの夜会っていつも誰が来てますー?」


 パドレの話に飽きたのか、サフィが声を上げた。


「戦争屋の連中ばっかりだよ」

「私の感覚でいえば、ここに来てるまともなやつらは冒険者かな」


「でもその戦争屋の中にはアマナも入ってるんだよね?」


 相変わらずサフィは敬語とタメ語が入り混じった口調で喋っている。


「そうだな」


「ダメですよー」

「自分の生徒のことをそんなふうに言ったら」


「別にまともが褒め言葉だとは思ってないさ」

「まともじゃなくても別に良いんだよ」


 私たちのやり取りをパドレは崇高なものを見るような目付きで見ていた。


 馬車を降りてきたときの人間味のある雰囲気はなんだったんだ……?


 今はまさに"宗教の人"って感じだ。


 こう言っちゃなんだが前の世界だと、かなり近寄りがたいタイプ。


「ふーん」

「ねっ、先生」

「まずはアマナに会いに行こうよー」


 私は思わず足がふらつきそうになった。




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