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薄氷を踏む

──「アウラミライ侯爵学園」医務室 10/02/朝


 サフィが医務室の外へ出るまで数十歩。


 私からすれば、その一歩一歩が薄氷を踏むかのごとく。


 だけど幸いにも考える時間ならそれなりにある。


 闇魔法"レテ"を使い、極限まで引き伸ばした体感時間の中で私は考え始めた。


 さて、どうやって引きとめるべきか。


【候補1】


「あー!」

「そういえば授業に必要な魔道具を忘れちゃったわ!」

「でもなー、こんな体調が悪いとひとりで取りに帰れないなー!」

「誰かいっしょに私の邸宅まで来てくれないかなー!」


「じゃあ、私がついて行ってあげるね」


 唐突すぎる。というか妄想の中なのに演技下手すぎるでしょ、私。


 まあでも及第点ね。サフィに教室の状態を知らせずに学園からも大きく引き離せる。


 今日はそんな授業がないという点を除けば。


【候補2】


「あっ、くらっときて倒れそう!」

「貧血かしらね!」

「あー、鉄分が補給できないと午後も授業に出れないわね!」


「じゃあ、私の血でも飲む?」


 なんで血なのよ。少し私の願望が妄想に出すぎているのかもしれない。


 実際にはサフィかイレミア医師に回復魔法を使ってもらうことになるはず。

 

 それだと大して時間が稼げない。


【候補3】


「──捻じ曲がれ。彼方の安寧」

「ぐはっ!」

「ゲボボボボ……」


「アマナ、急に何してるの!?」


「おいおい、私の医務室を自殺現場にするつもりかね」


 自分の体に闇魔法を撃ち込む。


 絶対にサフィをこの場に釘付けにできるけれども、これは最終手段にしておきたいわね……。


【候補4】


「先生、ちょっと失礼します」

「──捻じ曲がれ。彼方の安寧」


「ぐっ、なぜ私を……」


「アマナ、急に何してるの!?」


 イレミア医師に闇魔法を撃ち込んでみる。


 せっかく恩を売り付けた大人を学園側に潜り込ませたのに、その意味がなくなってしまう。


 これは却下。


【候補5】


「体調悪い、寂しい、泣きそう、サフィがいっしょにいてくれないと無理」


「もー、アマナったら仕方ないな~」

「先生がいる前で……」


 こんな反応だったら苦労しない。


 実際には──

「アマナ、急にどうしちゃったの……?」


 みたいに引かれて終わりだ。


 せっかく毎日話せるぐらいの仲になれたのだから、なるべく博打には出たくない。


 もしも上手くいったとしても、ここにはイレミア医師がいる。


 この人の前では少し格好つけておきたいのよね。なんとなく。


 というか、そんなことを言い出したら、どの候補もアホ丸出しなので却下に決まっている。


 はあ、これまでの人生、魔法の修練だけじゃなくて頭と演技力も鍛えるべきだったわね……。


 仕方ない。


 例外の候補を選ぶしかない。


 つまり、そもそもの原因を排除してしまえばいいのだ。


 サフィがこの部屋を出るまで後わずか。




 そのあいだに教室内の聖女たちを、この離れた医務室から全員倒す。





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