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皇子のテリトリー

──「ミーティア・ハスク」館内 10/03/夕方


 それにしてもアレンといっしょだと気分が上がんないな。こいつには悪いけど。


 まあ、こいつはこいつで私と馬車の中で話した時点で本題を済ませてるだろうし、あとは消化試合だろ。


 アマナ……もう来てるかな。


 そんなことを考えながら私は大広間の中に足を踏み入れた。


 大広間の中には金や黄色を基調とした綺羅びやかな内装。そして広大なテラスにつながる開け放たれた空間が広がっている。


「ねえ、先生」

「ちょっと兄貴がどのへんにいるのか見てくれない?」


 アレンは私の耳元に顔を寄せながら囁いた。


「お?」

「ああ……任せろ」


 一番遠い壁まで100メートルくらいあるんじゃないかって広さの大広間を私は一気に見渡す。


 普通の視力だと点にしか見えないような顔を……って教室棟で今朝アマナと会ったことを思い出すな。


 あの廊下より長いかも。


 えーっと、ギマランギマラン……。


 私は特徴的な長い赤髪を探していく。


 今日はなんか知らない顔が多いな。


 あ、いた。


 え?


 なんで隣にアマナがいるんだ。


「おい」


「せ、先生?」

「そんな殺気立ってどうしたのさ」


「お前ら何考えてんだ?」


「ちょっと落ち着いてよ……」

「どうしたの?」


「今日のアマナのエスコート相手はギマランらしい」


「ええ~?」

「ちょっと信じられないね」

「許嫁がいるのに……」


 これは……こいつの腹芸か?


 私だとちょっと判別がつかないな。


「お前が私のエスコートをした日に」

「ギマランが許嫁をほっておいて偶然アマナのエスコートをしたって?」


「うう~ん……確かに偶然ではないのかも」

「とにかく僕は兄貴と示し合わせて来たりはしてないからね……」


 どっちみち私じゃこいつの口を割らせることはできない。


 それにしてもアマナが2回死んでから色々な連中が動き始めてるのは確かだ。


 私を含めて。


 死んだこと自体は気取(けど)られてないんだろうが……。


「あの楽団の右手側の卓にいる」

「私たちから見て左な」

「だいぶ遠いから向こうまで行かなければギマランと鉢合わせることはないだろ」


「助かったよ」


 というかギマランに驚いて気付かなかったけど良く見るとアマナの右手側にはイレミアが立っていた。


 くっそ……私も後すこし早く来ておくべきだった……。


 別にいいさ……イレミアが会えなかった半年間は私がアマナといっしょにいたんだから、これくらい。


 テンパったアマナから喧嘩吹っ掛けられてばかりの日々だったけど、それも今となっては良い思い出だしな。


 それでイレミアのエスコート相手は、と……うーん、誰だ?


 見たことがないな。


 筋骨隆々とした体格に柔和な笑み、短めの金髪。


 気味が悪い、たぶん国教会のやつだ。


「あー、そろそろ人が集まってくるかも」


 私がアマナの卓を凝視していたらアレンが口を開いた。


 確かにアレンの顔を見た貴族連中が血相を変えてこっちに寄ってきている。


「私は芽衣と会ってくるから」


「え?」

「アマナじゃないの?」


「ちょっと用があるんだよ」

「じゃあがんばれよ」


「はいはい」

「先生も気を付けてね」


「ああ」


 私はアマナがはめてくれた指輪を外しながら中庭に出た。




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