表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/72

なんだ夢か

──目の前には見覚えのある天井 10/02/朝


「生きてる?」

「いや……なんだ夢か」


 私は自室のベッドに横たわっていた。

 窓からは明るい朝日が差し込んでいる。


 どうやら私は聖女だらけの教室のせいで相当な鬱憤が溜まっているようだ。


 まさか聖女たちが派閥争いを起こした結果、その余波に巻き込まれて死ぬ夢を見るなんて……。


 まあ、実際に毎日それくらいの重圧はかかっていると思う。


 なにも研鑽を積んだこともないアホな学生がいきなり聖女としての力を持ち、なんの教養も嗜みも持たず自由気ままに生きているのだ。


 そんなメス犬どもに囲まれている以上は鬱憤が溜まるに決まっている。


 それ以前に鬱憤どころか実際に毎日死にかけている。物理的に。


 正直もう学園には行きたくない。


 入学してから半年ほどしか経っていないが、右を向けば聖女、左を向けば聖女、後輩も聖女、先輩も聖女。挙句の果てには担任までもが元聖女ときた。


 どうなっているのかしら。


 どうせなら聖女を皆殺しにする夢を見られたら良かったのに。


 だけど悲しいことに現実の私は聖女に抗うことができない。色々な理由のせいで。


 私の家系は初代皇帝とともに皇国を興した七人の魔法使いがひとり「アマドーラの魔女」を始祖に持つ名門「プロパトリコ・アマルティマ家」。


 アマルティマ家の子孫は代々、闇属性の魔法を司ってきたという。


 有り体に言えば闇属性の魔法しか伸ばせないらしい。


 もちろん末裔たる私も……。


 闇属性の魔法は、あらゆる物体、霊体、次元、空間に干渉できる。


 伝説によれば「アマドーラの魔女」は空間を圧縮したり、引き伸ばしたりすることで時間さえも操ったそうだ。


 だから闇属性の魔法は机上の空論においては万能だ。


 ただ、ひとつだけ弱点がある。聖属性の魔法には絶対に打ち勝てないのだ。


 "時間なんて操れるなら勝つとか負けるとかの範疇を超えてるんじゃないの?"という疑問を私は抱いたことがある。


 だけど、その領域に到達できたのは伝説で語られるような魔法使いだけ。


 少なくとも私はそんなことできないし、皇国暦1000年以降は家門の誰もがその領域には至れなかったとお父様に聞いたことがある。


 そうは言っても時間が操れるなら、いつの誰ができないとかできるとか関係がないようにも思える。


 だって本当に時間を操作できるなら「アマドーラの魔女」が私の時代に来ることもできるはず。


 どの時代にも、どの時間軸にも行けるはずだし、未来永劫「でき続ける」と思う。


 それとも時間を操るってそういう意味ではないのかもしれない。


 だとしたらどういう意味なのやら。


 まあいいや。


 とにかく聖属性の魔法に正面から闇属性の魔法をぶつけたらかき消される。

 これはわかりきった事実。


 と、そんなことを考えながら部屋を出る準備を終えた──

 なんだか夢の中でも同じことを考えていた気が……。


 これもまあいいや。


 私は考え事や問題を後回しにするのが大得意なのだ。


 どうにも聖女たちのせいで自虐的な思考が染み付いてしまっているけれど今日も一日、名門令嬢らしく優雅に過ごしていきましょう。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ