ステップを踏みながら
2−7
今回はラトゥーリアの護衛も兼ねるため、自分の身動きを封じるようなスタイルは無し。
万全の状態でダンスをしなければならないと、2人なりにラトゥーリアを頼り問題解決を図ろうとしていた。
「では注意する点をお教えします」
教えるラトゥーリアの方は、他人のミスを省みることで、自分の踊り方を思い出していく。
務に追われ中々舞踏会に参加できずブランクがあったが、身振り手振りを加え動きながら教えていくと、かなりすんなりと感覚を取り戻せた。
これなら後でルフトに付き添うだけで何とかなりそうだと思えて、こっそりとラトゥーリアは胸を撫で下ろした。
「大股をやめる。優れた体幹にまかせて避けたり踏ん張ったりしない。
もしもつまづいたり、よろめいてしまった場合は無理せずお互いに寄りかかるくらいで。
タビーはもっと体の力を抜き、ネグに寄りかかるくらいの意識を。
ネグは今くらいの力でタビーをエスコートできるくらいに、タビーの動きを制限するイメージでどうか」
「了解」
「がんばります!」
少しずつコツを掴んで、新しい間違いが出たら軌道修正。
その繰り返しを短期集中で繰り返すことで、タビーとネグの練度はみるみるうちに上がっていった。
(あら、もう教える必要はないような……)
曲の種類次第ではもう少し慣れが必要そうだが、舞踏会ならこれで問題ない。
お見事と、ラトゥーリアはともかく拍手をした。
「お二人は大丈夫そうなのでルフト、最後に頼めますか?」
「はい」
隅の方で見学していたルフトを呼び、ラトゥーリアは踊るために身を寄せる。
「踏んでしまわぬよう気を付けます……どうぞよろしくお願い致します」
「問題ありませんわ。よろしく」
ルフトの方もゆっくりとラトゥーリアの手を取り、もう片方の手を腰へ回す。
一応ヴァローナにも報告済ではあるが、この場で見学していたら嫉妬に狂っていたであろう距離感だと、観客に回った隊員たちは思った。
ゆっくりとしたリズムが始まり、二人はステップを踏んでいく。
「この速度なら問題なさそうです」
「良かったですわ」
ルフトもステップ自体は覚えているらしく、滞りなくエスコートしている。
「学生時代以来なので、とても懐かしいです」
「卒業式などで踊られたのですか?」
「えぇ、必死で覚えたものです」
レヴルナール領には、オーロノウム国中の優秀な若者が集まる学園都市がある。
確かどの学校にも卒業式で社交界のマナーに慣れる一環として、舞踏会が開かれていたとラトゥーリアは記憶していた。
ルフトもそのどこかの出身なのだろう。彼は中々思うように動かない足に対して忌々しげに目を細めて、それでも懐かしさから微笑んだ。
「うんうん! バッチリですね!」
短いダンスが終わると、見守っていた3人から惜しみない拍手が上がる。
「雪狼姫様とルフト素晴らしかったです。足も大丈夫そう」
「ありがとうございます。おかげ様で」
改めてラトゥーリアはダンスの終わりを再現するように深々とカーテシーをし、ルフトも恭しくボウアンドスクレープを返した。




