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決意と練習

2−6

 理由は複数考えられるが、最たるは今ここにマックルルがいるからだろう。

 協力者とはいえ、彼は漆烏ではない。ギルド長の行動も読めない今、迂闊に巻き込めば思わぬ事故を起こしてしまう可能性もある。

 そして、ラトゥーリアの調子と現場の状況を見極めなければならないのだろう。

 繊細な判断が必要故に、鋭い一手を打てる。ラトゥーリアはそう捉えた。


「多少の危険を冒しても必要な事……というお考えですね」

「その通り。ラトゥーリアの事は私と、漆烏が守る」

「……では、恐れずに行けそうです」


 演技ができるかという不安も、ヴァローナの決意を聞き払拭された。

 できるできないではなく、やらねばと、ラトゥーリアの心は決まった。


「おと……マックルル様、心配してくださりありがとうございます。

 きっと大丈夫です」

「……ご武運を」


 マックルルはラトゥーリアに対し深く頭を下げ、祈りを捧げた。

 

 ◇ ◇ ◇


 大まかに次の行動が決まったのなら、それに向けての準備が始まる。

 まずラトゥーリアは、パーティでのマナーのおさらいをした。

 今の身分は男爵令嬢。それも社交界デビュー前の若い娘。商人上がりの新米男爵の娘であり、デビュタント前に子爵との婚約が決定している。

 社交界の通例を様々飛び越えてしまっている存在故に、立ち回りには細心の注意を払う必要がある。

 

(あまりに完璧な対応でも浮く……粗相しすぎても悪目立ちする……

 緊張しすぎて対人の応対はヴァローナ様に任せきりの令嬢……というていで、喋るのは最低限に……)

 

 難題だと、ラトゥーリアは頭を悩ませた。

 ある程度演技の方針が決まったところで、行動を共にするタビーやネグ、ヴァローナと共有しつつ、自室で一人実際に演技にシミュレーションをしてみる。


(練習は引き続き行っていくとして、次は……)


 漆烏の隊員たちとの勉強会だ。

 丁度次の作戦に必要な事をおさらいできるのでとても運が良いと、ラトゥーリアは勇み足で待ち合わせの訓練所へ向かっていく。

 今回の内容は舞踏会のダンス。

 参加者はタビーとネグ。見学でキャリコとルフトだ。

 

「僕は一旦見学で、最後に少しだけ参加させて頂ければと思います」

「わかりましたわ」


 ルフトの右足には大きな古傷があり、障害が残っていると、ラトゥーリアは最近になって知った。

 歩行補助のための器具が埋まっており、日常生活に差し支えはないが、未だに走ったりステップを踏むなどは苦手なのだという。


「参加すればいいのに……みんな気にしないよ?」

「作戦で踊る奴が優先だろ」

「あ、うん……そうだね?」


 何故か少しムキになりながら、ルフトはタビーの提案を断った。断ってすぐバツの悪そうな顔をしつつも、それ以上言葉を発さなかった。

 微妙な空気になってしまったのを取り繕うように、ラトゥーリアはタビーをネグの前へ促す。


「まずはどの程度なのか、一度踊ってみましょう」


 演奏隊などはいないため、この場は特殊なメトロノームを利用する。曲のテンポと拍を設定して針を動かせば、即興ながらダンスの指針となるリズムが出来上がる。


「足踏まないように」

「そっちこそ」

 

 針が刻み始めたと共に、ネグとタビーは踊り始めた。

 背の高い二人のダンスは強さと美しさを兼ね備えており、とても迫力がある。舞踏会のステージで一際目立つ大輪の花になるだろう。

 ただし、今回参加を申し出ただけあり、欠点もいくつか見受けられた。


「あまりに、その、動きが洗練されすぎています」

「あー……あははは」

「貴族ではなく諜報部隊の身のこなしなのです……」

「……難しい」


 競技としてなら天辺を狙えるレベルだが、舞踏会は技を競い合う場ではない。

 よくタビーとネグのペアで舞踏会の諜報へ赴くらしいが、今まではわざわざ怪我で本調子でない時に参加したり、錘を仕込んで動きを制限したりなど、涙ぐましくも方向性のおかしい努力をしていたという。

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