バルコニーにて
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「それでラティ、少し良いかな?」
「はい?」
空気を呼んだネグとセフィッドは、即座に退散して肉を取りに行った。
いつの間にかラトゥーリアの手元にあったグラスやお皿も消えている。あの2人が気をきかせて別の机に置いておいてくれたらしい。
これは仕方がないと、ヴァローナにエスコートされ、食堂から続くバルコニーへついていく事にした。
「何か用事でも……あっ」
ヴァローナに話しかけようとすると、答えが返ってくる前に抱き寄せられた。
ただ言葉なく、静かにラトゥーリアを抱きしめ、存在を堪能していた。
「……悲しい事でもあったの?」
何とか腕を伸ばし、頬に触れてみれば、ヴァローナは弱弱しく笑顔を浮かべた。
パーティの場ではいつも通り振舞っていたが、本当は何か途方もない、今はどうにもならない感情を抱いて耐えているようだった。
「……ラティのおかげで少し元気になったよ」
「言えない事?」
「今は言えない。祝いの場が台無しになるのは避けたいからね。
次の計画の事は後だ」
場を考えながらも、ヴァローナはラトゥーリアに少しだけ内情をこぼした。
ラトゥーリアも今はそれだけで十分だと追及をやめる。
その代わり、距離が近いことを利用して彼の頬を捉え、ぐっと自分の方に引き寄せた。
「……今回は心の準備をしておきましたし、元気ですのでぇ⁉︎」
ヴァローナから、本当に驚いたらしい目を見開いた表情に満足していたら、当たり前のように反撃を喰らった。
「んんっ……ぁ……」
噛みつくような、貪られるような口づけの嵐に、ラトゥーリアの足腰はすぐに立たなくなってしまった。
これ以上やるとまたルフトに怒られるからと、一時的に理性を働かせたヴァローナは、もう一度ラトゥーリアを抱き寄せて尋ねる。
「……今夜だけでも一緒の部屋は?」
余裕のない、熱のこもった言葉に流されそうになるが、ラトゥーリアは何とか踏みとどまる。
「それはまだちょっと勇気が……それに、復讐が終わったら全部ではなかったのですか?」
幸せすぎて、ただの小娘とただの青年に戻ってしまう。
ラトゥーリアが誓いを盾に説得すると、ヴァローナは拗ねた様子で諦める素振りを見せるが、目にはまだ熱が籠っていた。
「……先に、味見しても」
「だめです」
「心と体だけ……未来と過去はまだだから……」
「屁理屈をこねないで!」
拗ねた顔が可愛い。その顔が好きだとラトゥーリアが思っているのを、ヴァローナは瞬時に理解し畳みかけてくる。
耐えきれず、ラトゥーリアは大声で叱りつけた。




