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小さなパーティ

1−43

「うう……お肉もなんだけど、お祝い、参加したかったぁ……」

「君のおかげで僕も行けないんだけど」

「ごめぇん……」

 

 本日の子爵邸は、復讐の第一歩を成功させた事を祝う、ささやかな立食パーティが開かれている。

 その功労者の一人であるはずのタビーだが、食器は握れない上、ラトゥーリアを心配させたくないからと、泣く泣く医務室に留まっている。


「まぁいいさ」


 ルフトはその付き添いである。彼としてもパーティには参加したかったが、これはこれでいいかと思い直している。

 賑やかな場も好きだが、こういう少数で気楽な場も心地よい。


「何が食べたい? 取って来るよ」

「お肉いっぱい」

「適当にとってくるけど野菜も食べなよ。

 栄養の偏りは健康の敵。治癒も遅くなる」

「……お母さんみたい」


 タビーの軽口に思いきり怪訝な顔を返しつつ、ルフトはパーティの開かれる食堂へ向かった。


「ルフト、お仕事お疲れ様です」

 

 ラトゥーリアが目ざとくルフトに気付き、グラスに入った白ワインを手渡す。

 便宜上でも隊長の奥方、そして雪狼姫にそんな事をさせるわけにはと慌てるが、ラトゥーリアは気にしていない様子だった。

 他の隊員と談笑していたヴァローナの方も、今日は良いからと目配せされる。

 

「タビーはまだ……?」

「手指のギプスはまだとれないので、病室で食べさせます」

「それは……あとでお見舞いに参りますね」

「ありがとうございます。タビー、泣いて喜びますよ本当」


 ため込んでいた怒りを爆発させた結果であり、本人的には名誉の負傷らしいが、それでもラトゥーリアのために負ってくれた大怪我だ。

 いっぱいお礼を言い、話し相手になれるのならいくらでもなろう。

 2人分の飲み物と、肉と野菜を半々で盛りつけた皿を持って医務室に帰っていくルフトを見送りながら、ラトゥーリアはこの後の予定を整えるため思案しはじめた。


(……あら?)


 ふと、視界の端に話しかけたそうにこちらを見ている隊員が2人いる事に気付く。

 ヴァローナと談笑していた2人だ。視線を返せば、2人はそわそわと近寄って来た。


「雪狼姫様」


 声から、転移魔法でセルドー鉱山まで送ってくれた二人だとわかった。

 二人共が茶色と青のオッドアイを持ち、顔立ちが一緒。そして息ぴったりにラトゥーリアを呼んだことから双子なのだという事もわかる。

 

「あなた方も、ありがとうございました……良ければお名前をお教え頂けませんか?」

「私はネグと申します」

「僕はセフィッドです。

 何度か雪狼姫様とはご一緒させていただいておりました」


 ネグと名乗った方は茶色の髪をさっぱりと刈り上げており、セフィッドは前髪が少し長い。

 簡単に見分けがつくようになっていてありがたいと、ラトゥーリアはこっそり思った。

 

「二人は転移魔法を得意としている他、橇や馬車の運転も得意だ。

 戦闘面でも優秀だから、恐らく今後も一緒に仕事する事になるよ」


 ヴァローナが彼らの後ろからひょっこり顔を出し、補足した。

 確かに、犬やトナカイの扱いに長けた隊員がいたのは記憶している。もしかしたらその隊員がセフィッドだったのかもしれない。

 ネグの方はセフィッドから話を聞くに留まっていたが、尊敬していると照れながら伝えてくれた。

 

「ネグ、セフィッド。改めましてどうぞよろしくお願いいたします」


 挨拶をすると、2人も淡泊だが恭しく頭を下げた。

 タビーたちに比べると随分感情が希薄そうに見えるが、彼らなりに嬉しく思ってくれているのは読み取れた。


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