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魔女の所業

1−41

「さて、報告は以上です。勉強会に参加するので失礼いたします」

「ルフトも参加するのか」

「えぇ、手紙の書き方を教わりに」

「手紙は楽しいか?」

「……まぁそれなりに。余計な詮索は無用です。それでは」

 

 いつも無表情に近いルフトの顔が少しだけほころんでいる。

 隊長として喜ばしいなと、ヴァローナは笑顔で彼を見送った。

 

 本当なら自分もラトゥーリアとの勉強会に参加したいが、今は懸念点を潰すのが先だと意識を切り替える。

 

(処刑は明日……かぁ)


 一人執務室に残されたヴァローナは、魔法で一羽の烏を作り出し、窓から放った。

 烏はレヴルナール領をあっという間に飛び去り、王都の空までやって来る。

 王城の屋根に降り立った後は烏から鼠へ変身し、今度は地下へ向かっていく。

 細長い下水道を駆け抜け、牢獄まで到着したところで、隅の暗がりに身を潜めた。

 

 目的は、あの3人の囚人たちだ。

 明日の処刑はもう覆らないとはいえ、念には念をとヴァローナは監視の目を送ったが、そこでは丁度何かが破裂する音と、床に水気が撒かれるような音が響き渡っていた。

 

「あーあー、読み取る前に爆発しないでほしいのです」


 音の出所は、アリエラ・クローシュカだった。

 紅玉姫の二つ名にふさわしい薔薇のようなドレスに、血で汚れた白の手袋。

 その足元には頭を爆発させ、ひくひくと痙攣するバル・ヒュースが倒れていた。

 

「……この身体とても不便ね」


 どうやらアリエラは、彼らの記憶を魔法によって無理やり読み取ろうとしているらしい。

 強すぎる魔力を持て余し、一人誤って殺してしまったようだった。

 

「お許しくださいアリエラ様……どうかお助けください……!」

「えいっ」


 今度はめそめそと命乞いをするシュヴァー・ハンジールの頭に、ぽんと手を添える。

 

「あなた、魔法使いね?

 これは期待できますね。頑張って耐えてみましょう。

 大丈夫、痛くなーい。痛くなーい。ほら、かっこいいところ見せて?」

「あ……がっ……がぼ……」


 シュヴァーの頭の中は今、魔法の嵐によってかき回されているようだった。

 身体は痙攣が止まらず、白目をむいて鼻血と涎を滴らせる。

 暫くして、喉奥から噴き出てくる泡で窒息し、シュヴァーはそのまま動かなくなった。

 

「うーんろくな記憶がない。

 これじゃあ諜報部隊がかっこいいだけじゃない」


 ぷりぷりと可愛らしく怒りながら、アリエラは二人の死体を足蹴にして、最後に残ったグロースに歩み寄る。


「あ、悪魔……」

「あらぁ? 気づいちゃいましたか?」


 アリエラは今日一番の笑顔を浮かべた。

 彼なら何か知っているかもしれない。前の二人よりもずる賢そうだから、良い記憶が手に入るかもしれない。

 そして、心躍る苦しみ様を見せてくれるだろう。

 

「さぁ、あなたの頭の中も見せて」


 蠱惑的な声で耳元へ囁き、アリエラは禿げ上がった頭に手を添えた。

 そして、男は断末魔を上げる間もなく爆発した。


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