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第一の復讐の翌朝

1−40

 昨晩、グリース・セルドー、シュヴァー・ハンジール、バル・ヒュースの3名とセルドー鉱山作業員4名が、侯爵領での横領罪で逮捕された。

 

 怒り心頭のヴァルプス・レヴルナール侯爵の口添えで、主犯格の3人の死刑が決定した。執行は明日の予定。

 他鉱山作業員は鉱山責任者の命令に逆らえなかったと、情状酌量の余地を認められ、情報提供と引き換えに減刑となる。

 

 主犯格の一人、グリース・セルドーは、うわごとのように冬の魔女の名呟いており、今後慎重な調査が進められる。

 横領された緑啓石については王家を通し職人ギルドへ献上される予定。


 また、主犯格たちが根城であるセルドー鉱山第三洞窟に隠されていた兵器については、ヴァルプス・レヴルナール侯爵管轄の諜報部隊が処分する。

 

「侯爵がそういう性格でよかった」

「思わぬ幸運くらいに思っているのでしょう」

 

 ヴァローナとルフトは新聞を読み終え、少しだけ笑い合う。

 作戦の夜、侯爵が急に王都に呼びつけられたため、ヴァローナが言伝を預かっていたのは事実。

 自分が労力を割くことなく、あずかり知らぬところでも横領事件が解決していたのなら、それ以上は気にしない。

 漆烏がその事件を解決してくれるなら、自分の功績にもなる。

 キッチリと罪人を死刑にできた事と、王家へ献上品を送れた事もあって上機嫌だった。


「隊員の怪我は?」

「タビーが指を数本骨折。それ以外はありません」


 あれだけ豪快に殴りつければ仕方がないとヴァローナは苦笑いを浮かべた。

 筋力強化の魔法は筋力を強化するだけであって骨は強化されない。

 タビーはその性質を重々理解して使いこなしていたはずだが、あの場は怒りで感覚を忘れてしまったらしい。

 転移魔法で帰還後、緊張の糸が切れたタビーはぎゃんぎゃん泣きわめいた。

 ルフトがげんなりしながら処置し、寝かしつけ、一晩経った今もルフトの世話疲れは抜けきってないようだった。

 

「ラトゥーリアの調子はどうだ?」

「近々普通の部屋に移っていただきます」


 今の様子だったら問題なさそうだと、ルフトも太鼓判を押した。

 復讐の第一歩を終え、体調を崩すことなく、今日も元気に歩行練習に勤しんでいる。

 近々隠れ里への案内も計画していると付け加えたところで、ヴァローナが疑問を口にした。


「……あれ、私の部屋に移る感じではない?」


 一応夫婦という間柄を便宜上持ち、一応想いも通じ合っているはず。

 なら平和な日常の事を考えて、今からでも一緒の部屋で良いのではと、ヴァローナは提案していた。

 

「お伺いしましたが、ラトゥーリア様曰くそれはもっと後、ゆくゆくがよろしいと」

「そうか」

「お気持ちはわかりますが、性急すぎます」

「……そうか」


 長年の願いが叶って幸せだと、人はポンコツになる。

 仕事での人付き合いは完璧と言ってもいい隊長が、想い人相手だとこうなってしまうのかと、ルフトは少し感慨深くなった。

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