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雷の幕引き

1−39

 必死に追いかけ弁解しようとするが、足がもつれて転んでしまう。

 その拍子に、グリースはそ自分が槍を手にしている事を思い出した。

  

(くそぉ……!!)


 どうせ死ぬなら、偉そうでいけすかないこの貴族を殺してから。

 思えばずっと憎かった。疎ましかった。邪魔で仕方がなかった存在だ。

 それからでも遅くはない。


 土壇場で溢れた邪心に身を任せ、グロースは雄叫びを上げながら突進していく。

 だが、突如目の前に現れた青いドレスの揺らめきに急停止して、再び無様に転んだ。


「ひ、ひぃ……また、魔女……!」


 これは、ラトゥーリアの独断だった。

 作戦に無い行動だったが、思わず飛び出してしまったのだ。

 侯爵令嬢雪狼姫ラトゥーリア・レヴルナールとしての立ち振る舞いを思い出し、冷徹な表情を作り上げる。


「お前の居場所はもう無いと思え」


 後ろに控えているキャリコが魔法を発動できるだけの時間を稼ぐべく、セルドーに向かって腕を突き出す。

 すると、特大の雷が轟音を伴ってセルドーの脳天に直撃した。

 ラトゥーリアはその衝撃に驚き、尻餅を突いてしまう。

 

「あっ?」

「あっえっ?」


 ラトゥーリアとしては、脅かし程度に発動できればよかった。

 既に成功しているように、水でもかぶせられれば御の字だと思っていたが、怒りと焦りから魔力は雷の魔法として出力されてしまったようだった。


「とっても良い即興だったよ」

「……すごい威力でした。素晴らしい」


 黒焦げになったグリースが倒れたのを見計らい、ヴァローナはヴァルプス侯爵の変装を解き、すぐさまラトゥーリアを助け起こした。

 作戦外の行動を責められるかと身構えていたのだが、予想外の好反応にラトゥーリアは何も言えなかった。

 キャリコの方も美しい魔法を見たと、ラトゥーリアへの尊敬を深めている。

 

「あとは、国が何とかする。帰ろう」


 ヴァローナはラトゥーリアの手を柔く引き、歩き始める。

 

(……恥ずかしかった)

「いやぁ冬の魔女、堂に入ってたなぁ。かっこよかった」

「名演技でした」

「……それは、よかったですわ」


 やると決めた事だったが、いざ終わってみると照れが後からやってくる。

 だが、褒められる事と結果が伴ったのもあり、不思議と悪い気がせずラトゥーリアは困ったようにはにかんだ。


(無事に計画を終えられて良かったですわ……)


 そうして、復讐の第一歩を上手く終えられた事を喜んだ。

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