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格の違い

1−35

 地下倉庫の大きな鉄扉を前にして、ヴァローナはキャリコに指示を出す。


「派手にやります」

「あぁ、ド派手に頼む」


 この中にいるであろう相手を驚かせてやれと、ヴァローナは笑って了承した。

 

 キャリコは、静かに精神を集中しはじめる。

 ゆらりと、周囲の空気が陽炎のように揺れた気がした。


「伏せて」


 ヴァローナにマントの内へ抱き寄せられ、ラトゥーリアがびっくりしている間に、ものすごい轟音を持って鉄扉は破壊されていた。

 巨大な砲弾ような魔法を放ったキャリコは、透過と気配遮断を解いて倉庫の中へ入っていく。


「な、な、なんだぁ⁉︎」


 どもり気味の叫びの主は、シュヴァー・ハンジールだった。

 バルが賊探しに行ったあとすぐ、ヴァローナの推測通り地下倉庫の様子を見に来ていた。

 鉄扉が破壊された衝撃で盛大に転んでしまったらしく、みっともなく慌てていた。

 キャリコは無言で、無数の魔法弾をシュヴァーに向かって発射し始める。

 

「 危ないだろ! アホなのか!」


 シュヴァーも悲鳴を上げながら応戦するが、爆弾の詰まった木箱に当たらないよう気遣っているせいで精彩を欠いている。

 対するキャリコは木箱が壊れようとお構いなしだ。ともかくシュヴァーに暴力的な魔法を浴びせにかかった。


(……ヴァローナ様の評価通り、ダメだこの人。

 木箱が気になるのなら防護魔法を張ればいい。攻撃しながらでもそれくらい簡単)


 シュヴァーは、魔法を学んでいる途中の学生すらできるような技術もままならない。基礎がボロボロだ。

 王城勤めの魔道警備隊は、国家試験の難関を突破できた優秀な魔法使いがなるものだと思っていた。

 だが、この体たらくは何だと、キャリコは呆れた。

 

 程度が低いおかげでラトゥーリアの救出が円滑に進んだというのもあるが、同じ魔法使いとして悲しくなってくる。

 そして、こんな者たちが優秀だと持て囃されているから、ラトゥーリアのような真に才能ある者が埋もれるのだと、怒りも湧いてきた。

 こんな嫌な気持ちになる戦いはさっさと終わらせるべきだと、自分が一番得意な魔法を発動させるべく精神を集中させる。


「こ、これ以上近寄るなら、ただでは……!」


 壁際に追い詰められたシュヴァーは、木箱から零れた爆弾を掴み取り、掲げてみせた。

 既に大量の魔力を充填され、あとは地面に叩きつけるだけで地下倉庫を粉々に吹っ飛ばせる。


(そ、そんな……流石にそれは、ここ以外の鉱山の人々にも被害が)

 

 しかし、やけくそなシュヴァーにハラハラしているのはラトゥーリアだけだった。

 

「……とても愚か」


 キャリコは一段と低い声で呟く。

 彼はただただそこに佇んで禍々しい雰囲気を放っている。

 それに怖気づいたシュヴァーは爆弾を思いきり床に叩きつけるが、カーンという良い音を立てて転がっていくばかりで、何も起きない。

 既にキャリコは、魔法を発動させていたのだ。


「あ、れ……」

「石の魔力は、全部吸い取った」


 自分の魔力回復と攻撃を兼ねた魔力吸収の魔法は、天才であるキャリコのみが扱える荒業だった。

 

「は、ぁ? そんな事って」


 ありえないと否定しようとしたが、突如シュヴァーは酷い倦怠感に襲われ、その場から動けなくなってしまった。

 キャリコはゆっくりと歩み寄り、脂汗にまみれた面長な顔を鷲掴む。


「……汚い魔力」


 そう耳元で呟いて、キャリコはシュヴァーの魔力を根こそぎ奪い取った。

 一瞬にしてシュヴァーの身体は枯れ枝のように干上がり、彼はその場に力なく倒れ込んだ。


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