味方
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「死刑執行人マオ・シャヴラトゥール」
職業とシャヴラトゥールという家名を聞いてやっとラトゥーリアは記憶を掘り起こせた。
代々死刑執行人を務める家系であり、長い歴史を持つが、その職業故男爵位に甘んじている。
仕事の内容はともかくとして、一度だけ相まみえた彼はとても知的で礼儀正しかったと記憶していた。
彼らの制服なのか、アミュレット付きの黒いローブで顔の上半分をすっぽりと隠してしまっているので、すぐに情報が一致しなかったのだ。
ローブの下の素顔はこんな雰囲気だったのかと、しげしげと見つめてしまう。
「彼は、恐らく身代わりに気付いている。
だが誰に報告するでもなく、処刑を実行した。
……仲間にならなかった場合は、復讐対象に組み込まれるかもしれない事を留意しておいてほしい」
「荒事は……」
「控える。命まで取りはしないが、手荒な事はすると思う」
ラトゥーリアの意向で、すべての作戦はなるべく荒事は避ける選択肢を取られている。
何とか納得して仲間になってくれるようにと、今は祈るしかなかった。
「もう一人は……今国外だ。ともかく予測不能で扱いが難しい存在だ。
本格的に仲間にする算段がついたらいずれ。
ただ、引き入れる事ができたらとても強力な味方になる」
ヴァローナがそこまで断言する人物とはと、ラトゥーリアはかなり興味が湧いた。
伝説的な強さの戦士か、老獪な天才魔法使いか、はたまたと、少しわくわくしてしまう。
「……以上が、現状の敵と味方になる。
早速だが、3日後には第一の標的へ向かう予定だ」
急ぎ対応の必要があるという、あの3人の男の人相画が再び現れた。
牢獄は暗がりでよく見えなかったため、改めてラトゥーリアは顔と名前を頭に叩き込んだ。
「作戦の共有はその日の朝にでも……それとラティ」
「何でしょう」
「作戦にはあなたが必須になるが、歩行の練習は3日で完璧にしなくて良い」
「え?」
歩行練習を増やさなければと考えていたラトゥーリアだったが、にぃと頬を吊り上げ笑うヴァローナの言葉に首を傾げた。
とりあえず、彼には良い案が浮かんでいるというのだけ汲み取れた。
3日後、体調をしっかり回復させたラトゥーリアは、今日も今日とて歩行練習に勤しんでいた。
完璧でなくて良いとは言われているものの、ある程度はしっかり歩けた方がいいし、狭くなった視界についても更に慣れておいた方が良いと判断したからだ。
その甲斐あって屋敷や外で歩き回っても転ばず、疲れなくなってきている。傍で見守っているルフトも、回復が目に見えてほっとしている様子だった。
(さて、そろそろお時間でしょうか……)
歩行練習に加えてもう一つ、ラトゥーリアにはやって起きたい事があった。




