今後の立場
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「申し訳ありません……僕から説明します」
「ルフト」
「よろしいですね?」
「……はい。すまないが頼んだ」
本来は何よりも真っ先に説明しておく事だろうと、ルフトは深くため息をついた。
「今後王城や社交場に赴く可能性も無くはありません。
なので一応の身分として、子爵夫人というお立場を雪狼姫様に」
「な、なるほど……え、それって」
「ヴァローナ様の奥方様という事になります」
ラトゥーリアの顔は、瞬時に真っ赤になってしまった。
眩暈を起こさないよう深呼吸をし、呆れながら氷枕を用意しはじめたルフトに大丈夫だと伝えた。
顔を冷ましている最中、かつての彼らの発言がふと引っかかる。
(もしかして、身内になるから仮面を外しても大丈夫という判断で……)
ゆくゆく隊長の奥方になるお方、ということで身内。
肩書だけの関係だとしても、敬愛する雪狼姫様の前で素直に気持ちや感謝を伝えられるので隊員的には万々歳。
仮面はいいのかという質問の時、ルフトが少し言い淀んでいたのは、恐らくヴァローナが二人きりの伝えるべき内容だったからだ。
「なる……ほど……」
急に様々な答えが出て、片言の発言になってしまった。
「申し訳ありません。熱が上がるような事を……」
「いいえ、少し、幸せがすぎて……」
良い事のはずなのに、それで体調を崩していては仕方がない。
少しずつでも幸福感に慣れていこうと、ラトゥーリアは再び深呼吸しながら思った。
「偽名も用意いたしますし、漆烏の一員ということで公の場でも仮面の装着が許されます。
変装もうちの隊員の手にかかればどうとでも。
キャリコやヴァローナ様のような魔力を視認できる者でもいなければ、簡単にバレることはないでしょう」
「心強いですわ」
公にはラトゥーリアは処刑された事になっている。
これから復讐以外の日常生活を送るためにも、偽名と立場を新しく準備してもらえるのは非情にありがたい。
「……その、真面目な話でしたら熱が上がることもないでしょうし、ヴァローナの出禁を解いて頂く事は……?」
「……わかりました。僕も同席でよければ」
ルフトは少し不満げながらも、扉の裏からヴァローナを手招いた。
すごすごと腰低く、ヴァローナはベッドサイドまでやって来る。
「かたじけない」
「話題は敵と味方の説明。それ以外の話題は僕が止めますので」
「善処しよう」
主治医の仕事を増やすのはこれ以上良くないと、ラトゥーリアの方も気をひきしめた。
「大事な説明ができず申し訳ない……」
「いいえ、こちらこそ」
「早急に、復讐相手の説明と、味方の説明をさせてくれ」
ヴァローナはマントの隠しポケットから手帳を取り出し、中を読み上げる。
小さな手帳だが魔法が施されているようで、開いた瞬間、宙に煙で描かれた人相画が浮かんできた。
最初に浮かんできた顔に、ラトゥーリアは思わず毛布を握りしめてしまう。




