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もう一度話を

1−20

 処刑の日の夜、嫌がらせのように侯爵に呼びつけられ、祝勝祭の好景気に導かれやって来た他国の重役相手に片っ端から諜報活動を行っていたヴァローナだったが、ようやくひと段落ついたらしい。

 簡潔に報告を済ませ、無茶振りの代償に数日間の休みをもぎとってきたとの事だった。


「以前私が説明した内容の続きを直接お話をしたいと仰っておりました。

 体調がよろしそうであれば、夜にでもお時間を頂けませんでしょうか」


 目が覚めてから一度も会えていない。こちらとしても話したい事が山ほどある。


 「えぇ、勿論ですわ」

 

 ラトゥーリアは強く頷いた。

 万全の状態で会うためにと、しっかり休息に努めることにしたが、やっと会える嬉しさと緊張であまりよく寝付けなかった。


 ◇ ◇ ◇


 夕食を終えたラトゥーリアは着替え部屋に移り、用意された黒のドレスに袖を通した。

 タビーに薄く化粧を施してもらい、眼帯替わりに巻かれた包帯を外せば、左瞼が現れる。

 傷は綺麗に治っていた。だが、眼球がない分少し窪んでいて、化粧では隠しきれない影を落としてしまっている。

 

(義眼……)


 もう侯爵令嬢として表舞台に立つことはないだろうから、容姿については最低限相手に不快感を与えなければ良いだろうと思っているものの、いざ目の当たりにすると気持ちが揺らぐ。

 だが、視界を補う魔法のかかった義眼を見せてもらったが、美しい魔石を切り出して作られたそれは一目で高価なものだとわかる物で、尻込みしてしまった。

 加えて、子供じみた理由で言えなかったが、目の中に重そうな魔石を入れるのが怖くなってしまったのだ。

 

(今は眼帯で良いでしょう……隠せば失礼に当たらないはず)


 ドレスと共に用意されていた白い花の刺繍入りの黒の眼帯を手に取り、緩くまとめた髪の下を通すように装着する。


(……うん、とても素敵)


 銀灰の髪と色白の肌に黒の眼帯はとても似合っていた。怪我隠しのためとは思えないほど綺麗で、アクセサリーとしても十分通用する。ラトゥーリアの気持ちは、とても上向きになった。


「準備はよろしいですか?」

「えぇ、お待たせいたしました」


 隣に控えていたタビーは、松葉杖を持って傍までやって来る。

 ラトゥーリアは杖を受け取り、歩行練習がてらヴァローナの待つ執務室へ向かい始めた。

 外の雪道で練習した成果もあり、少しよろけながらも何とか一人の力で歩けていて、案内のために付き添っていたタビーは驚愕の声を上げた。


「もうこんなに歩けるようになったのですか?」

「皆さんのおかげで治りが良いのです」

「雪狼姫様のお役に立てたのならとても光栄です!」


 普通の徒歩よりずっと遅い速度だが、タビーとの会話が楽しくて苦にならず、気が付けば執務室前に着いていた。


「……あの、私が緊張してきました」

「ふふっ」


 素直で天然な発言に、ラトゥーリアの緊張が解かされた。


「ヴァローナ様、ラトゥーリア様をお連れしました」

「あぁ、ありがとう」


 タビーがノックをすれば、ドアがひとりでに開いた。

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