現状把握
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「まず、ヴァローナ隊長が用意した偽ラトゥーリア様は処刑されました。
身代わりだとは現状気付かれておりません。
新聞にも大々的に記事が載りました」
あの断罪の夜が明けてすぐ、冬の魔女ラトゥーリア・レヴルナールは処刑され、今は国中が祝勝の祭りで賑わっているらしい。
その割に周囲は賑わっている様子がないと思っていたが、理由はすぐに理解することとなった。
「次に、ラトゥーリア様は暫くこのアイル子爵邸にてご療養頂きます」
ここはアイル子爵の屋敷。地理的にはレヴルナール領北方の山岳地帯で、切り立った崖の上だった。
周囲には隠れ里がいくつかあったはずだが、国の祭りとは無縁の、独自の文化で暮らしている。
(あまりに、わたくしにとって都合の良いことが起きすぎていませんか……?)
先程のタビーとキャリコたちのやり取りも含め、こんなに良い対応をしてもらえて大丈夫なのかと不安が押し寄せてくる。
あとで治療費や世話代を請求されても良いよう、何とか対策を考えておこうと、思考が明後日の方向に傾き始めていた。
「左目に関しては、義眼を用意できるのですが、いかがなさいましょうか」
最善を尽くしたが、潰された左目だけは治せなかったと、ルフトは深く頭を下げた。
「頭を上げてください。本当に痛かった身体をここまで治してもらえただけでも充分すぎるくらいです……
本当に、助けてくださりありがとうございます」
ラトゥーリアは本心から言葉を述べた。彼が手を尽くしてくれたおかげで、今の自分はここにいる。
本当に満ち足りていると伝えれば、ルフトはやっと頭を上げた。
感情的になりすぎたと、彼は一度咳払いをして態度を正す。
「ちなみに義眼は、少し考える時間を頂けますか?」
「承知いたしました」
自分の金銭面での不安があるとは言えなかったが、今のところ不自由がないからと、答えを保留にした。
「速足の説明で申し訳ありません……そして、遅くなりましたが、隊の者が不躾な真似を申し訳ありません……」
「簡潔でわかりやすい説明でしたわ。
あと、本当に久しぶりに砕けた会話ができて嬉しかったので、むしろ感謝しているくらいですわ」
「……恐縮です」
ルフトはようやく緊張がほぐれたようで、薄く微笑んでいた。
少し近寄りがたい雰囲気のあるルフトも、笑うととても愛嬌があるのだなと、ラトゥーリアはまたほのぼのとした気持ちになった。
「今更な質問なのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、何なりと」
「仮面はよろしいのですか?」
漆烏は皆、烏を模した仮面を被っている。
その意匠には個人差があり、体格が似た隊員でもある程度見分けがつくようになってる。
彼らのトレードマークとも言っていい物だが、この場にいる3人は全員素顔を晒している。
「あれは外に赴く時だけですし、雪狼姫様はその……」
ルフトは一度視線を逸らし、頬をぽりぽりとかいた。
「……僕の口からは説明できないのですが、雪狼姫様にはもう隠さなくても良いのです」
我儘に深く追求すればルフトが困ってしまうだろう。
今はともかく、素顔でゆっくりと会話ができる機会を喜ぼうと、ラトゥーリアは笑顔で頷いた。




