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夜を越えて

1−12

 断罪の夜明け、本日明朝、冬の魔女である雪狼姫ラトゥーリア・レヴルナールの処刑は滞りなく行われた。

 

 四肢の骨は折れていて使い物にならず、騎士が両脇を抱えて処刑台へ上げなければならなかった。

 その姿を見た民衆たちからは、悲鳴が上がる。失神してしまう者もいた。

 

 顔は紫に変色したあざと腫れで醜く歪み、左目に至っては潰されていた。

 美貌は見る影もない。心もとうに壊れ果て、生気が消え失せている。

 冬の魔女に相応しい醜悪な姿だった。

 

 本来なら大歓声が上がるはずの死刑の瞬間、民は皆沈黙してしまった。

 死刑執行人が見事な太刀筋で断首し、首を掲げてみせても、民衆は不安と恐怖ですくみ上がり、逃げ出す者までいる始末。

 この刑を取り仕切る第一王子が勝利宣言を上げ、紅玉姫アリエラが聖なる炎によりラトゥーリアの死体を灰に帰したところで、ようやく恐怖は去ったのだと、民は活気を取り戻して平和な日常に戻っていった。

 

「……一先ず上手くいったようで良かった」

「最悪な気分ですけどね」


 今日の号外を運んできた白衣を纏う漆烏隊員ルフトは、あくびを交えながら忌々し気に呟いた。

 

「全くだ」

 

 ヴァローナは読んでいた号外を力任せに握りつぶしかけたが、何とか執務机に置いた。

 大事な資料に当たってはならないと、怒りを治めるため一度深呼吸をする。

 作戦は成功した。

 我々は第一の難関を越えたのだと、言い聞かせた。

 

 断罪の夜、ヴァローナは本物のラトゥーリア・レヴルナールを転移魔法で、この子爵邸まで逃した。


 レヴルナール領の最北端、標高の高い山岳地帯に建てられた小さな屋敷は、諜報部隊の根城だけあり、見た目以上の設備を有している。

 二階建ての普通の屋敷の地下には山岳を繰り抜いて作った広大な地下空間。そこには隊員たちの訓練場や武器庫、更には国中の医療技術と治癒魔法に合わせて作られた医務室を備えている上、敵からの諜報や魔力探知を阻害する防犯魔法が常に発動している。

 ラトゥーリアを匿うには、うってつけの場所なのだ。


 医務室に届けられたラトゥーリアは、すぐにルフトの治療が施された。

 瀕死だと一目でわかる凄惨な状態だったが、薬学と治癒魔法を得意とする彼は、怪我の状況を確認しながら慎重に傷を癒し、彼女を生きながらえさせた。

 

 身代わりの最終確認をした後、鍵の返却や侯爵への報告を手短に済ませ、ヴァローナも急ぎ転移魔法で子爵邸へ移動する。

 医務室で処置を受け、穏やかに眠る彼女の顔を見たところで、ようやく肩の力が抜けた。

 身代わりの魔法は、限りなく本物の人体を作り出せる代償に、魔力の消費が大きい。

 転移魔法2回分と合わせれば、一日に使用できる魔法の限度を軽く超えてしまう。


 魔力切れの酷い倦怠感に襲われながらも、ヴァローナはその後つきっきりでラトゥーリアの眠りを見守った。


「本当はヴァローナ様にも休んでいただきたいんですがね」


 そう言うルフトも、目の下に濃い隈をつくっている。

 一応他の隊員と交代しながら治療と看病にあたっていたが、緊張からあまり休めていないようだった。


「あの不味い栄養剤なら飲んだぞ」

「そうじゃなくて……あーもう、とりあえずラトゥーリア様の現状報告を聞いたら寝てください。

 寝てる間はタビーたちが何とかしますから」

「……わかった」


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