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アグリニオン戦記 外伝 Ⅲ  作者: 田丸 彬禰


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魔法誕生の現実 

「……ところで、素朴な質問なのですが、新防御魔法はいったいどのような攻撃魔法に対して効果的なのでしょうか?」


 ライムンドからやってきたこの問い。

 まあ、やってくるのはある意味当然といえば、当然のことである。

 なにしろ、この魔法はその性質上、元は魔法だったとはいえ具現化した火球からは身を守ることはできない。

 さらに、将来はともかく、この時点ではその防御対象となる現在のトレンドである攻撃魔法はその姿も現わしていない。

 つまり、防御魔法といいながら、肝心の防御する対象が事実上存在しない状態だったのだ。


 もちろん尋ねられた方もそのことは重々承知している。

 これ以上ないと言わんばかりの苦笑いでその言葉に応じる。


「まあ、ライムンド殿が言外に言うとおり、これは現在のところは転移魔法以外には防ぐものもない魔法ではあるが、いずれ使うときがくるかもしれない。それに、これはもともと目指していたものの過程でできあがったものだ。無意味なものでも失敗策というわけでもないと私は考える」

「えっ」


 当然彼は驚く。


 ……目指していたものの研究中にできた魔法?

 ……では、最終目標はそこではないということですか?

 ……それはぜひとも詳細を聞かねばならない。


「それはどういうものなのでしょうか?」


 やってきた彼からの問いに、待ち構えていたかのようなタンガラーがニヤリと笑って答える。


「この魔法を最初に成功させたアントゥール・モンダーテが目指していたのは敵の侵入及び魔法攻撃を防ぐ魔法空間だったのだよ」

「……つまりケッカイ」


「ケッカイ?ほう。ライムンド殿の頭の中にはこのような魔法まであったのか。では、モンダーテに話をしてその魔法が成功したときにはケッカイという名をつけてもらうことにしようか」

「あ、ありがとうございます」


 思いがけずやってきたその言葉に心からの感謝の言葉を口にしながら彼は思った。


 ……最高だ。


 ……もちろん自らが魔法の命名者になるというは名誉なことだ。

 ……だが、それよりも……。


 ……ゲームではレベルが上がって高位の魔法が使えるという設定はあっても、一から魔法をつくりあげていくなどというものはなかった。

 ……だが、ここでは地道な努力のもとに魔法が生み出され、そして、進化していく。

 ……そして、今、私は実際にそのような場面に立ち会っている……。


 ……これぞ至福。


 ……そして、こうしてこのような場面に立ち会い、改めて見直すと、ゲームの設定というのは微妙に笑えるものであることに気づく。


 ……タンガラー師が以前口にした言葉を借りれば、魔法も技術のひとつ。必要に応じて次々と生み出されていくもの。


 ……だが、ゲームの世界では最初に用意されたものがすべて。

 ……強力になったり、使用できる魔法が増えたりということはあっても、魔法自体をあらたに開発されるということはない。


 ……さらに、魔法の進歩のしかたがいかにもデジタル。

 ……到達点または限界点はあるにしても、本来の進化とはゼロから一、次に二へと徐々に進み、最終的に百に辿り着くのであって、突然ゼロから十へ、そして百へとはならない。

 ……よくも、あんなものを疑問も持たずにやっていたものだ。


 ……ゲームの世界だからといえば、それまでだが、万が一、元の世界に戻ることになったら、ゲーム会社に改善を要求する項目だな。


 ……まあ、そういうことにはないだろうが。


 ……そして、そうなると、やはり魔法を扱う側に身を置けなかったのは残念の極みとなるわけなのだが、こればかりは仕方がない。

 ……体感できない分、満足できるまで見学させてもらうことにしよう。


 様々な思いをとりあえず、心に押し込んだ彼は、まずは心を落ち着かせるために息を整え、それから、もう一度口を開く。


「それから……」


 そうやって、延々と続く問い。

 彼の休日はいつも通り過ぎていく。

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