<5>終わりのはじまり
急に竹中くんが、京都に行きたいと言い出し、1泊2日の京都旅行に行くことになった。
京都駅に着いて、バスで源氏物語ゆかりのお寺に行った。
しみじみとしていて雰囲気が良い。
階段を上がった見晴らしの良い境内のところで、
急に竹中くんが話し始めた。
「心春、結婚しようか。」
「えっ。」
「いつまでも、フラフラしていられないしさ。友達に紹介してもらった
デザイン会社で働くことにするよ。」
突然の事で驚いたが、2人とも30過ぎだし、
まぁ、そろそろよね・・と思い承諾した。
宣言どおり、竹中くんはデザイン会社に就職し、
サラリーマン生活を始めた。
入籍し、子供も産まれた。
カフェは半年バイトの子と一花ちゃんに任せることにした。
一花ちゃんは、金曜と土曜の夜営業を担当した。
アイドル的に人気もありファンが集まり、とても繁盛した。
子供が6カ月になり、平日は保育園に預け土日は竹中くんに
子守りをしてもらってカフェに復帰したが、
めっきりお客さんが来なくなって赤字経営になり、
カフェを引退する事にした。
無念だったが、事務の仕事と育児が忙しすぎて
悲しむ余裕も無かった。
私が去った後、元レストランシェフの人がカフェを譲り受け
開店した。
風の噂では、料理が美味しいようで繁盛しているようだ。
私にはカフェ経営の才能が無かったのかもしれない。
落ち着いたら、また何か始めたい、そう思った。
<完>