えぴそーど1;これは、幻覚ですか??
これは、一体どういうことだろう。
家に帰り、今日はカレーだ!!とCMの宣伝並みに明るく答え、カレーを頬張った。
そして、部屋に入りベッドの上に置かれた怪しい本。
興味本位で手に取り、本を開いてみる。
しかし表紙には何も書いて無かったので期待はしていなかったが、何か書いてあったらいいなという希望を持ってページをめくってもただの真っ白い紙だった。
と、そこまでしか覚えていない。
僕はいつの間にファンタジーの世界の人になっていたんだろう…。
周りを見る限り、木、樹、奇!!!
緑が生い茂り、無駄に動物が駆け回る。
そして、一番僕が文句を言いたいのは僕の格好。
誰も求めてないのに、僕が着るだけでギャグセンス抜群に。
一生の間で着た覚えがあるのは保育園の頃。
だけど、僕はもう高校生。保育園の頃の記憶を全部覚えてるわけではなく、曖昧にモザイクが沢山かかっている。
一応、僕の性別を言っておこう。
女顔で、髪は肩まである長さ──一般的にはボブヘアーと言うらしい──だといっても付くもんは付いてるし、限りなくウエストが細いであろう。
やっぱり、女の人も細い方だが、男には敵わない。
そう、もちろん僕は男だ。
だが、この格好はなんだ!!??
いくら名前が変わってて、変だといじめられて女っぽいといわれても、この格好は無しだと思う。
何故、僕が不思議の国のアリスでアリスが着てそうなヒラヒラの洋服を着なくちゃいけないんだッ!!
簡単に言うならば、メイド喫茶でメイドさんが来ていそうなものをもう少し明るめにしてヒラヒラ──レースのこと──を付け加えた感じの服である。
何があっても冷静に判断するのが僕のポリシーであるがこの格好は冷静に判断する方がおかしい。
たしかに、名前はファンタジーっぽいけど…正確はきちんと現実を見てますッ!!確かに、ウサギのぬいぐるみやクマのぬいぐるみは好きだけど。それは簡単にいうとオトメンまではいかない訳で…。
っていうか、僕はここをファンタジーの世界と認識しているみたいだけど、ここは本当にファンタジーの中なのか??夢の中かもしれないし、ちょっと、ヤバイけど幻覚とかかもしれない。
「ここに居たんだ~」
ふと、後ろから声がした。
反射的に振り返り、後悔するには時間がたっぷりありすぎた。
そこに居たのは、確かな男性(少年)の人。胸のふくらみが無いし、咽仏から判断する。
しかし!!問題は其処ではない。僕はいったいどんな格好をしている?
性別は男。見る人が見れば分かるし、まぁ分からない人は最後まで分からないだろう。
分かる人は、そんな趣味は無いのに、変な趣味があると思われる可能性もある。
でも、この格好は誰が見ても女に見える。だって、服がすでに乙女チックで座り方や態度が女っぽいというか…。
冷や汗が僕の頬を伝たる。
ただでさえ、女顔がコンプレックスなのにこんな姿を見られたらトラウマになりかねない。それこそ、幻覚を見る引き金だろう。
その男性はしばらく僕をじっと食い入るように見つめると、にこっと笑った。
その男性も何故か小さくて女らしいがどこか、男っぽさもある。さっきの声はきちんとした声変わり前の男の人って感じだし。
「どうしたのその格好」
「!!!……こっちが知りたいです…!!」
微かな怒り。
抑えきれないムカつき。
そして、突っ込みと言う名の八つ当たり。
「そっかぁ。そうだよね。こっちに来る人はみんなそんな格好だし」
「まさかッ!!??僕に限らず他の人もこんな格好を!!??」
「髪の毛が少ししかない人とか、頭の毛が全く無い人とか(笑)」
「(笑)ってなに!!?それは、ハゲと坊主の人を現してるの!!??分かりにくいよ!!」
僕は毎回思う事が二つある。
何故、突っ込みの人はこんなハードな事を毎回、完璧に出来るのか。
そしてもう一つはなぜ僕はいつもはボケ──で良いのか、わから無いけど──なのに突っ込みと言っても自信ないし。
「まぁ、とりあえず、僕に突っ込みは無理だから」
「えぇ!!じゃあ、誰に突っ込んでもらえば良いの!!??」
「………そこで駆け回っているウサギさん」
「え゛!!??話せるの?ウサギさんは話せるの!!??」
ふぅ。これでようやく位置が逆転したか。
やっぱり、ボケの方が気が楽だ。だって、すべっても突っ込みのせいにすれば良いし。
「…んで、ここは何処?ドイツ?イギリス?アメリカ??」
「ここは、童話の中です♪」
「……あー、ようするにこれは幻覚だ、と」
「その通…って違う!!あまりにも理解が早かったから凄いな、と心から褒めたのに違う方向突っ走んないで!!」
なんだよ、コイツ。以外に突っ込みのセンスあるじゃん。なんで、わざわざ僕に突っ込みをやらせるのか。ボケは分かりにくいし。
はー、幻覚か…一番嫌なパターンだな。
「つか、ファンタジーの世界なんてあるわないし。やっぱり、夢のほうが良かったな。なんで幻覚なんて見てるんだろう…やっぱりアルコール中毒??雛見沢症候群??」
「いや、実際的にはファンタジーだし!!っていうか、アルコールを口にしてるのか!!??高校生なのに??しかも、雛見沢症候群って…ひぐらしじゃんか!!」
「長い突っ込みご苦労様。いやー…突っ込みなんて生で見たよ」
「そ、そんな馬鹿にした言葉なんて要らないよ!!っていうか、そんな目で俺を見るなーーー」
憐れむ目で見てやった。思い切り。
と、ここまではっちゃけたのは良いけど、実際的にはファンタジーってあるのか??
たしかに、僕は最初はファンタジーって思ったけど、現実的に考えるとファンタジーって無いよな。夢ってのは一日の記憶の整理で見るものって聞いたから、こんな人は見たことも聴いたこともないし、夢って線はほとんど消えるよな。
ってことは、本当に幻覚なのか??でも、幻覚見るようなことした覚えは無いから違うと思うんだけど。
そして、最後の仮説は本当にここがファンタジーの世界だって事。
ジーっと、その男性を見つめる。
確かに、地球で言うならエルフみたいに耳がとがってるし、髪の毛は茶色というよりブラウンといった方が合ってるし…無駄にカッコイイ。
それに比べて、僕はどうだ??普通の黒髪で黒い瞳…これをブラックといったらなんだか変な人になる気がする。僕がちゃんとした平均の男顔だったらどんなに良い事か…。
まあ、確かに女顔のおかげで半分モテてる──こう見えても結構モテて、バレンタインなんかもチョコを沢山もらう──もんだけどさ、逆を返せば、男の人もBLの人はほとんど僕に寄ってくるし、下手すればこ、こ、告白…までしてくるもんなんだから困る。
話がだんだんと逸れてきたけど、これが本当に童話の中…つまりファンタジーの世界だったら…。
「ですから、ここは童話の中。まだ出来上がってないカケラの中ですッ!!」
「…カケラ??」
紹介がまだだった。
僕の名前は安達華化羅。
女っぽい名前だし変わってるよな…。これもコンプレックスの一つ。
カケラはどんどんと物語を綴ってゆく。
僕の知らないところで。
その話は、面白いのか悲しいのか…。
過去の僕には分からなかった。
これからどうなっていくのかなんて事は。
僕以外にも、誰にも───…。