表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/155

転職のスカウト

「そういえば昨日、レベッカさんが、お別れの挨拶あいさつに来てくれたよ」

 笑いの発作が、やっと収まってから、ユナが話し出す。


『犯人をおびき出すのに、利用しちゃって、ごめんなさい! でもユナさんのおかげで、「主犯逮捕」のお手柄てがら……女性刑事の、面目躍如めんもくやくじょになったわ! ありがとう‼』って、ぎゅっと両手を握りながら、大きな声で謝ってくれた。(声が大きいのは演技じゃなくて、地声だったらしい)


「子ウサギ達を扱う手が優しかったから、悪い人だと思いたくなかったんだよね。レベッカさんが正義の味方で、本当に良かったよー!」

「わかる、分かる! すっごい美人だけど、気さくで良い人だよな!」

 嬉しそうに、ミックがうなずく。

 あれれ……? 何でちょっと、ムカムカするんだろ?


「――それから、『ストランド警察は、いつでもきみを待っている! とミックに伝えて』って、伝言を頼まれたんだけど?」

 それまで『うんうん』と、うなずきながら聞いていた従者が、いきなり、げほげほっとき込んだ。

「ちょ、大丈夫⁉」

「げほ……だいじょぶ、だいじょぶ」

 涙目のミックを見据みすえて、

「それで……? 1週間も兎穴を、留守にした理由は?」

 腕を組んだユナによる、鬼刑事クラスの尋問じんもんが始まった。


「だから、最初はストランド警察から、『ウィーズルの件で、直接話したい』って、ウィルフレッド様宛に、連絡が来て……」

『事件の事を、思い出させたくないから』と、シャーロットとユナには黙って、ストランドに向かった主従。

『結婚式用に、臨時で雇った使用人の中に、ウィーズルの仲間がいて、また家宝をねらっているらしい』との情報に、レベッカを始め刑事数名が、追加採用されたメイドと従僕として、兎穴に潜入。

 領主とその婚約者の協力の元、犯人一味をあぶり出し、見事逮捕にいたった。


 ちなみに、シャーロットに変装した、レベッカから遠ざけるためと、余計な事を考えないように、ユナ(というか、アナベラとソフィー先生と厨房ちゅうぼうの皆)が作らされた薬は、犯人逮捕の時に軽いケガを負った、刑事達の手当に使ったところ、「劇的になおりが早い!」と喜ばれて。

 大喜びした乳母が、残った薬をびんに詰めて、お土産に。



「事件の流れは分かったけど……ミックは? 何の役回りだったの?」

 首をかしげたユナに

「連絡係と案内係、かな? ヘア村のイン(宿屋)に、警部たちと待機して。裏庭の石垣いしがき隙間すきまを使って、兎穴潜入班やウィルフレッド様と、伝言のやり取りしたり、計画の摺合すりあわせや、突入経路とタイミングを確認したり」

「えっ、そんな近くにいたの⁉」

「うん、実は」

「そういえば、『変わった棒術使って、逮捕にも協力してくれた』って、レベッカさんに聞いたけど。棒術って『剣道』の事だよね?」

「うん、まあ――ちょっと手伝っただけだよ。途中からジェラルド様が参入したら、あっと言う間に犯人達を、鎮圧ちんあつしちゃったし」

 照れたように、髪をかき上げて


「逮捕までとにかく、じっと待っている時間が長くて――ウィーズルを捕まえた時の、計画を説明したり、臨時雇りんじやといメンバーの似顔絵を、描いて見せたりしたら――『なんて斬新ざんしんな、突入方法と捜査技術だ』って、なんだかすごく感心されて。『ぜひ、ストランド警察の一員に』って、警部に誘われちゃって」

 てへっ――と、嬉しそうに話す従者を見て、『こっちは、あんなに心配してたのに!』と、ムッとした侍女が

「へーっ……それは良かったですね」

 ものすごく平坦へいたんな、棒読みで返す。


「だって『ストランド警察』って、前世で言えば『スコットランドヤード(ロンドン警視庁)』だよ⁉ あのホームズが顧問(こもん)探偵をしていた……そこからのスカウトって、すごくない⁉」

「あーっ……確かに!」

 前世ではユナも、結構ミステリー好きだったので、『気持ちは分かる!』と、ついうなずいてしまう。


「だろっ⁉」

「……それで?」

「それでって……?」

 聞きたくない。

 けど、知らない間にいきなりまた、いなくなられる方が、もっと嫌だ……。

 ぎゅっと両手を握りしめて、ユナは口を開いた。


「行くの? ストランド警察。――ここをめて?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ