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サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


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まさかの花嫁付添人

 翌日の午後、狼城から領主夫妻と跡取りの長男、ポートリアからは、すっかり元気になった、前兎穴領主夫妻とテリー伯父様が、続々と到着した。

 抱き合って再会を喜んだり、『はじめまして』の挨拶を交わしたり、にぎやかにき立つ、来客たちの中心には、笑顔のウィルフレッドとシャーロット。

 その後、遠方からの親族達も到着し、お茶会に晩餐(ばんさん)会、翌日の準備……花嫁花婿はもちろん、使用人全員が、目の回る忙しさの中、ユナはミックと話す間もなく、結婚式当日を迎えた。


「ミックが、ずっと留守にしてた理由は、『ストランド警察を、手伝っていたから』って、ウィルフレッド様から、お聞きしたけど……」

 詳しい事は、教えてもらってないし、あの『手紙』の意味も、まだ分からないし――もやもやした気持ちを抱えて、奥方の間に、向かう侍女。

「おはようございます、シャーロット様」

「おはよう、ユナ!」

 ベッドに起き上がり、にっこりと微笑む、本日の主役を見た途端、『もやもや』は綺麗さっぱり、どこかに吹き飛んだ。


 湯あみを手伝い、髪を整え、乳母やメイド数人と、ウェディングドレスを着つける。

 プリンセスラインのスカートの上に、バッスルを重ねて、薔薇の白刺繍しろししゅうやレース、粒パールで飾られた、長い裳裾もすそがふんわり広がる、真っ白なドレスに、ひじまでの手袋。

 ダイヤの飾りが付いた、パールのネックレスとピアスを付け、ベールをかぶせた髪には、伯爵家代々に伝わるティアラと、白薔薇の生花。

「……お美しいです、お嬢様」

「本当に、なんてお綺麗」

「妖精のお姫様、そのものです!」

 口々に賞賛しょうさんの声を上げる、侍女とメイド達、そして


「お嬢様の花嫁姿を、おがめるなんて……もういつお迎えが来ても、わたしは満足ですよ!」

「ほらほら、アメリア――お迎えなんて、まだ早いですよ。お二人の赤ちゃんとか、これからまだ楽しみが、たくさんありますからね?」

 早くも泣き崩れた乳母が、家政婦になぐさめられた途端

「お嬢様の赤ちゃん……! もしお迎えが来ても、追い返します‼」

 元気百倍になり

「もう――二人共、気が早くてよ」

 花嫁が初々しく、頬を染めた。


「こちらの準備は、終わったから――エマとジェイン、ユナの方をよろしくね?」

「「かしこまりました‼」」

 ほわ~っと、花嫁に見とれていた、侍女の両腕を、メイド友達二人が、がっしりとつかむ。

「えっ……なになに?」

「いいから、いいから」

「こっち来て、ユナ!」

 部屋の奥に置かれた、衝立ついたての向こうに連れて行かれ

「はい、脱いで!」

「なんで……⁉」

「いいから、いいから」

 制服の黒いメイド服とエプロンを脱がされ、白いドレスを着せられて

「ちょ、こんな豪華なドレス……何で、わたしが⁉」

「いいから、いいから」

 整えられた髪に、白い薔薇を飾られる。


「あれっ、そのネックレス――指輪?」

「あ、うん。仕事中は、付けられないから……」

「綺麗だね! せっかくだから、今日は指にしたら?」

 最後に、エマとジェインにすすめられて――何が何だか分からないまま、ミックから貰った指輪を、右手薬指にはめた。


「「出来ましたー‼」」

 じゃーん! と、衝立の向こうに押し出されて、鏡の前で、花嫁と並ばされる。

「とっても綺麗よ、ユナ!」

「本当に、よく似合ってるわ!」

「まるでお前まで、お嫁に行くみたいだねぇ……」

 花嫁と家政婦に、口々にめられ、祖母がまた涙ぐむ。


 ウェディングドレスより、スカートのボリュームを押さえて裳裾もすそを取り、飾りをシンプルにした他は、すっかり同じデザインの、少しだけアイボリーがかった、白いシルクのドレス。

「あの、これってもしや……『花嫁付添人(つきそいにん)』のドレス、では?」

 混乱しながら、たずねるユナに

「まぁ、ご明察めいさつ

 にっこりと、答えるシャーロット。

「付添人は、ヴァイオレット先生ですよね⁉ なんでわたしが?」

「それが学校の方の急用で、どうしても式に間に合わないと、連絡が入ったのよ。だから……」


『よろしくね、ユナ?』と花嫁に、小首をかしげて微笑まれ、その愛らしさ、清らかさには逆らえず、

「んんん゛……っ、はいぃーっ!」

 こっくりと、思わずうなずいてしまう、侍女であった。


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