侍女の日記23
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こんばんは、ユナです!
いやはや、驚き×無限大……まさか、おっとり金髪美人のエルシーが、ウィーズルの仲間で、わたしが疑っていたレベッカさんが、ストランド警察初の、女性刑事さんだったなんて‼
そもそも、ウィルフレッド様とミックが、ストランドに出かけたのも、『ウィーズルの仲間が、結婚式に乗じて、バイオレット・サファイアを狙っている』という情報を、警察が掴んだため。
犯人一味をおびき出すために、わたしから聞き出した『家宝の隠し場所』(「もし誰かに聞かれたら、こう言うように」と、執事さんから指示されていた、偽情報)をわざと大声で、レベッカさんが広めて。
その後、こそこそ書斎を探していた、臨時雇の従僕数人を、追加の新人従僕に扮した、刑事さん達がチェック。
中々お宝が見つからずに、イラついた主犯のエルシーが、身動きの出来ないシャーロット様を脅して、隠し場所を聞き出せるチャンスをわざと作り、お嬢様に変装した、レベッカさんが待ち受けていた――という計画を、わたしだけが知らなかったなんて‼
「わたしだけ除け者なんて、ひどい……」
しょんぼり、うな垂れていると
「黙っていて、ホントにごめんよ、ユナ!」
「ユナさんだけを、蚊帳の外に置いてしまい、申し訳ありませんでした――ただ『犯人のリーダー格が、メイドとして入り込んでいる』という情報が、ありましたので」
「その犯人に、『自然に情報を流して、油断させる役』が、どうしても必要だったの。ごめんなさいね」
おばあちゃんと、ミスター・アンダーソン、ミセス・ジョーンズが、揃って謝ってくれた後に
「ごめんなさい、ユナ……!」
「ロッティ、そんなに急いで――ホントに怪我でもしたら、大変だよ!」
現れたのは、ドレスを翻して走って来た、シャーロット様と、甘々な婚約者でした。
「お嬢様……足の捻挫は⁉」
「あれも、嘘だったの……」
結婚式のリハーサルの後、(わたしが牧師様に掴まっている間に)相談した計画では、ジェラルド様と遠乗りに行った先で、アクシデント発生――の予定が、お嬢様のとっさの判断で、ハルの脱走を利用。
(ちなみに、兎小屋の扉を開けたのはエルシーで、それを見ていたレベッカさんが、子ウサギ達が危なくないように、籠に確保。玄関ホールの隅に隠して、見つけたふり。ハルの脱走は想定外――だったそうです)
「ユナがすごく、自分を責めていることを、ばあやから聞いて……本当に、後悔したわ」
しょんぼりと俯く、シャーロット様の肩を抱いて
「わたしからも、謝罪するよ」
ウィルフレッド様も、頭を下げる。
「お嬢様……」
確かに、色々ショックだったけど。
そのおかげで、たくさんの人達の、優しさを知れた。
「本当にどこも、お怪我はされてないんですね?」
真剣な顔で、問いかけると
「ええ、大丈夫」
こくりと、大きく頷く。
「お医者様にも、協力して頂いたの」
診察の後、簡易寝台に移ったタイミングで、レベッカさんと入れ替わった後は、ずっと『奥方の間』で、ウィルフレッド様やジェラルド様、おばあちゃんやミセス・ジョーンズに、交代で守られていたらしい。
「でしたら……明後日は、完璧な花嫁姿を、見せて頂けますね!」
神様、わたしのお願いを叶えてくださって、ありがとうございます……!
『ばんざーい!』と、全開の笑顔で、両手を上げたら
「ユナったら……」
泣き笑いの表情で、シャーロット様がこちらに手を伸ばし、ぎゅっと抱きしめられた。
「はわわ……おっ、お嬢様⁉」
いきなりのファンサ(ハグ)に、あわあわしていると
「ありがとう、ユナ……大好きよ?」
耳元で、前世からの推しが、そっと呟いた。
こちらこそ、ありがとうございます……(気絶)
(ユナの日記より)




