表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/155

脱走事件の裏側

 料理長達の優しさを噛み締めながら、美味しい軽食を頂き、丁度食べ終わった時に出来上がった、薬入りのはち二つを、キッチンメイドから受け取る。

「何から何まで――本当にありがとう!」

 何度もお礼を言って、厨房ちゅうぼうを後にした。

「それにしてもミックってば、『ロッティ』のホントの正体を、料理長に話してたなんて――いつの間に?」


『ちょっと胸が痛むけど』

『ほんと、ごめん……』

 ケネスルートをあんな形で、強制終了させたこと、ずっと気にしてたのかな?

 人より頭が回る分、他人の弱さや痛みに敏感で、気配り上手な――誰よりも優しい、転生仲間。


「……早く帰ってこい」

 持ち重りのする鉢を、落とさないように抱え直して、ユナは足を速めた。



「おばあちゃん! 薬出来た……」

「しっ……!」

 モーニングルームに駆け込んだ途端、祖母に右手で、口をふさがれた。

「たった今お嬢様が、眠られたとこだよ」

「シャーロット様が……?」

 首を伸ばすと、衝立ついたてはしから、枕に乗った銀色の髪が、少しだけ見える。

 眠るあるじの身体は、どこからか運ばれた、簡易寝台かんいしんだいに移されていた。


「お医者様は? なんて?」

「さっき帰られたよ。『捻挫ねんざだから、とにかく安静に』って」

「そっか……奥方の間に移る時はまた、ジェラルド様に、運んで頂かないとかな?」

「それが、『少しでも動かすのは、良くない』らしくて。今夜はここで、休んで頂くことになったんだよ」

「『ここ』って、このモーニングルームで……⁉」


 思わず声をあげた侍女が、寝台に駆け寄ろうとした所で

「これっ!」

 乳母に手をつかまれ、引き止められる。

「だって、わたしのせいで、そんなご不自由を――せめてお顔を見て、謝りたいの!」

「お医者様のお薬で、眠ってらっしゃるのに。もし無理に起こしたら、それだけ回復が、遅れるかもしれないんだよ⁉」

 厳しい叱咤しったを受け、はっと我に返った。

「……わかった」

 ぎゅっと、両手を握りしめて、何とか気持ちを落ち着かせる。


「わたしに出来ること、何かない?」

「そうだね、それじゃあ……マーガレット、ミセス・ジョーンズに頼んで、湿布に使える布を、貰って来てくれるかい?」

「はい」

 しょんぼり肩を落として、玄関ホールへ出て行く孫娘の後ろ姿に

「ごめんよ、ユナ……」

 祖母は、そっと手を合わせた。


 家政婦を探して、玄関ホールからリネン室に、向かおうとした侍女を

「あっ、ユナ!」

「ちょうど良かった……!」

 ハウスメイドのエマとジェインが、呼び止めた。

「そんな所で、何してるの?」

 隅っこの暗がりにいる、友達二人に、首をかしげながら近づくと

「これ、見て……!」

 手に持ったかごを、エマが差し出した。


 ピクニック等で使う、ふたつきのバスケットを、小ぶりにしたサイズの、よくある品。

「この籠が、どうかした?」

 また、首を傾げたユナに

「そこの暗がりに、隠すみたいに置いてあったの」

 ジェインが、ホールの隅を指さす。

「えっ……?」


 その場所は、

『いたーっ』

 数時間前、新人メイドの黒髪美人、レベッカが、子ウサギ達を見つけた場所。

「ちょ、ちょっと、その籠見せて……!」

 明るい所で中を探ると、ふわふわした白と黒の毛が、指先に集まった。


「それじゃあ――レベッカさんが、子ウサギ達を隠して、皆に『逃げた』と、思わせたってこと? 何でそんな……」

「あっ……! でも似たようなこと、前にもあったよね?」

 事情を聞いて、うーむ――と考え込む、エマとジェインに


「うん……あった」

 家宝の指輪を探す間、使用人達を屋外にとどめておく為に、わざとハルとナツを逃がした……

「あの、ウィーズルの時と――同じ手口」

 強張こわばった顔でユナは、かつて自分を『拉致監禁らちかんきん』した犯人の、名前を告げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ