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サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


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式のリハーサル

 翌日の午前中、ヘア村の中心にある教会の前に、伯爵家の馬車が止まった。

「ウィルフレッド様にシャーロット様――ようこそ、お出で下さいました」

 初老の牧師に、にこやかに出迎えられた一行は、教会の中に。


「ではまず、ウィルフレッド様と花婿付添人(つきそいにん)が、先に入場致します。その後で、シャーロット様と御父上――ウルフ公爵様が、花嫁付添人をしたがえて入場。そして祭壇(さいだん)前で……」

 ベテランの牧師がよどみなく、式の流れを説明した後で、一通ひととおり動いてみることに。

 花婿付添人は弟君のヒューバート、花嫁付添人はヴァイオレット先生に決まっているのだが、二人とも本日は来られないので、付添人はベテラン従僕のニコラスとユナ、そしてウルフ公爵の代わりにジェラルドが、それぞれ代役を、つとめることになった。


 花婿達が入場した後

「そろそろ、行くか?」

 いつもの軍服姿のジェラルドが、くの字に曲げた、左腕を差し出す。

「はい、お父様」

 くすりと笑いながら、シャーロットが、右手をえた。

「ユナ? 準備はいい?」

 教会の扉の前で、振り返る花嫁のよそおいは、落ち着いた紫がかったグレーのドレスに、そろいの小さな帽子。

 ウエディングドレスもベールも、まだ身に着けていないのに、少し上気した顔は、輝くように美しい。

「はいっ、お嬢様……!」

 万感ばんかんの想いを込めて、侍女はうなずいた。


 リハーサルを終えて、教会から出て来た領主とその婚約者に

「おめでとうございます!」

「シャーロット様、今日もなんてお綺麗……!」

「明後日、楽しみにしてますよー!」

 噂を聞きつけて、いつの間にか集まっていた村人達が、声援を送る。

「ありがとう」

 にこやかに、手を振る二人の後ろでは


「ジェルさん、めちゃめちゃかっこよかったです! 本当に花嫁のお父さんみたいで――俺、もらい泣きしちゃいました!」

 花婿付添人の代役をつとめた、『ジェルさんファンクラブ代表(会員は全員男子)』のニコラスことニックが、熱く感想を語り

「『お父さん』……? それは、め言葉なのか?」

「もちろんっす!」

 少し困惑しながらジェラルドが、軍服のポケットに入っていたビスケットの包みを

「食べるか?」

 と差し出す、謎のファンミーティングが、開催されていた。


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