表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/155

5章プロローグ

 サウザンド王国北部に位置する、ヘア伯爵領。

 秋の柔らかな日差しに包まれた領内では、領主の結婚式を4日後に控えて、領民全員が浮足立うきあしだっていた。


「我らがウィルフレッド様に、かんぱーい!」

「お美しいシャーロット様にも、かんぱーい‼」

 村のパブ(居酒屋)では、『前祝い』としょうした飲み会が、夜ごと開かれ、

「ウェディングドレスは、結局どちらのデザインに、なったのかね?」

「『当日のお楽しみ』らしいけど……気になるよね~!」

 そこかしこで、噂話うわさばなしに花が咲く。


 中でも、ヘア・ホール(ヘア邸)、通称『兎穴』の使用人一同は、うきうきと踊り出しそうな足並みをそろえて、4日後のゴールに向けて、突き進んでいた。

 ただひとり――花嫁の侍女、ユナ・マウサーをのぞいて。


「あっ、ユナさん! 明日の、式のリハーサルですが……」

 ちょうど通りかかった侍女に、声をかけた執事が、

「ユナさん……? 大丈夫ですか?」

 いつも明るく仕事熱心な――時に、熱心過ぎる侍女の、ぼんやりと元気無い様子に、眉をひそめた。

「あっ……はい、大丈夫です! すみません、ミスター・アンダーソン!」

 あわてて顔を上げ、謝罪するユナ。

 でもその声にも表情にも、いつもの覇気はきが、見当たらない。


「どんなに忙しくても、気になる事があっても――きちんと食事を取って、よく休むこと。あなたがそんなだと、シャーロット様も、心配されますよ?」

 きびしさの中にも、気遣いと優しさがひそむ言葉で、さとされた侍女が、はっと顔を引き締める。

「申し訳ありません! 以後、気を付けます!」

 がばっと勢い良く下げた、ベージュブラウンの頭が

「……ミックは、大丈夫ですよ」

 確信に満ちた声に、ぴくりと揺れた。


「そんなに心配しなくても、大丈夫。結婚式までには必ず、帰って来ますから」

 ぽんぽんと、優しい言葉とてのひらに、肩を軽く叩かれて

「はいっ……!」

 嬉しさと有難ありがたさと、自分に対する情けなさに、ほろりとこぼれ落ちそうになった涙を、ユナは必死にこらえた。


 執事と別れた侍女は、受け取った伝言を伝えに、奥方の間へと向かう。

 階段に足をかけ、ふと玄関ホールを振り返った。

 そこは、ウィルフレッドの従者、ミックことミカエル・ドッゴと、お互いが『転生者』であることを初めて、確認し合った場所。

「懐かしいな……」

 あれからまだ、1ヶ月もたっていないのに。


「早く帰って来てよ、ミック……」

 そして、あの『手紙』の意味を、きちんと説明して欲しい。


 転生仲間の従者が、『もう会わない』的な置き手紙を残して、首都ストランドに出向いてから、5日が過ぎようとしていた。


5章(最終章)、スタートしました!

1~4章に、ブックマークやいいね、評価や感想をくださった方、訪問してくださった方、本当にありがとうございました。

引き続き、楽しんで頂けると嬉しいです♪



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ