4章エピローグ
「そういえば、お嬢様? 『バッスル下着』の時、先生とジェラルド様を会わせたのって……あれ、『わざと』ですか?」
茶器を片付けながら、尋ねると
「あら、ご明察――だって、ただカードを送り合うだけで、10年間――そろそろデートくらい、して頂かないと」
悪戯っぽく笑うシャーロット様の、口元に当てた左手薬指に光る、銀の指輪。
「さすがです、お嬢様!」
こくこくと頷きながら、ドレスの内側に鎖で下げた、ミックからの『お土産』に、そっと触れた。
『報告会』、楽しかったな~!
ウィルフレッド様がこっそり持参した、『選挙の時の見本絵(ミック作画)』を目の前で、前領主夫妻に披露されて、倒れそうになったこと。
港町だけあって、ヒラメや鮭のムニエル、エビのカクテル等の魚料理が、もの凄く美味しかったこと。
「シャーロットにも食べさせたい!」と駄々をこねる領主を、「生魚は無理だから、日持ちのする『燻製タラ』にしましょう!」と、何とか宥めたこと……等々を、ミックが話してくれて、
わたしも留守中の、アナベラ来襲とヒューバートルート自滅事件の顛末を聞いてもらって。
「こちらのイーサン様は、本当のご兄妹だったけど……『千バラ』の『イーシャロ』、いいよね?」
「わかる! めちゃかっけー!」
って、盛り上がって。
最後に
「実は……もう一つ、お土産があるんだ」
と、照れながら渡してくれた、小さな皮袋。
「わっ、キレイ……!」
中から出て来たのは、銀の指輪でした。
「ほら、料理長に渡しちゃった指輪、気に入ってたみたいだったから。あの代わりって言うか……」
「うん、実はお気に入りだったの……でも、こっちの方がステキ! ウィルフレッド様がプレゼントした、お嬢様の指輪と、ちょっと似てるね!」
「まぁ……同じ店で、買ったから」
「えっ、そんな高価な!?」
「違うって! ほら、シャーロット様のには、全体に透かし彫りと、アメジストの石が入っているけど――こっちは、ここだけだろ?」
確かに、はめた時上になる部分1㎝位に、可愛く、薔薇の透かしが入っている。
「ホントだ……ありがとう、ミック! すっごく嬉しい!!」
指輪を薬指にはめた右手を、斜め上に掲げて、角度を変えながら、飽きずに眺めていると
「そんなに、喜んでもらえると――俺も嬉しい」
少し俯いて、呟いた従者。
「うん、めっちゃ嬉しい! だってこれ……『推しグッズ』だよね?」
弾んだ声で、確認した途端
「は……? 『推しグッズ』?」
訝し気に、ミックが顔を上げた。
「そぉ! 『銀と薔薇』って、まさに『白ばら姫』モチーフ! あの、ハルの時の指輪も、そーだったけど――シャーロット様のと同じラインの、デザイン違いって――オタク心、分かってるね! さすが同担!!」
ばちーん!とウィンクしながら、ぐっと、親指を付きだしたら
「……うん。そこまで、喜んでくれたなら――それはそれで」
遥か遠くを見る眼差しで、転生仲間の従者は答えました。
そんな心配しなくても、今さら『同担拒否』とかしないのに……。
そして1週間後に迫った結婚式の、直前に巻き起こった、あれやこれやの騒動と。
その関係でミックが、謎の手紙を残して、兎穴から消える未来なんて……この時はまだ、想像もしなかったけど。
それはまた、次の機会に。
(ユナの日記より)
4章完結しました。
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次の5章が、最終章になります。
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