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サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


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侍女の日記17

『アナベラのお姉様、オリヴィア・ギボン子爵令嬢』の名前を聞いて、イーサン様が驚いた訳とは……


「オリヴィア嬢とは、先々週、父方の伯母上の音楽会で、初めてお会いしたんだ」

 それまでにも、招待された舞踏会や晩餐会を、何度も断っていたので、仕方なく出かけたイーサン様を、待ち受けていたのは――年頃のご令嬢軍団。


 ようは、音楽会と言う名の『お見合い会場』。

 アナベラ姉は、来年社交界デビューって聞いたけど。

 デビュー前に予行練習として、知り合いの家に招いてもらい、その時からスタートダッシュ――より良い『結婚相手』を探し始めるのは、貴族の子女にとっては当たり前の事。

 お嬢様はもう、婚約者が決まってらしたのに、それはもう大人気だったっけ。

 ひっきりなしに、ダンスを申し込んで来たり、お食事や軽食に誘う紳士方を、お父様とイーサン様が、笑顔で蹴散けちらしてたなぁ……。


 とにかくそこで、イーサン様ときっかけを作った、アナベラ姉は――『ウィルフレッド様の従姉妹』という特権を振りかざして、行く先々で待ち構えてたり、『次に会う約束』を取り付けようと、毎日のように手紙を送って来たり……

『ロックオンされた』事情を、(アナベラの前で、話す訳にはいかないので)書斎で手短に聞いた後、ガゼボのお茶会に移動。


 滞在予定の1週間が、今日で終わってしまうので、朝からしょんぼりしながら、お茶会の準備を手伝っていたアナベラに、

「せっかく仲良くなれたのに、もうお別れなんて寂しいわ。もうしばらく――結婚式が終わるまで、こちらにいて頂くのは――どうかしら?」

 にっこりと、お嬢様が提案しました。

「えっ……ホントに? ウィル兄様、わたし――まだこちらに、いてもいいの⁉」

 真ん丸な瞳で、問いかけられて

 「もちろん! シャーロットから電報で相談されて、叔母上にすぐ連絡したんだ。喜んで承諾しょうだくしてくれたよ」

 ウィルフレッド様も、笑顔でうなずく。

「嬉しいっ! 明日から行く予定だった、大叔母様のお家では、締め切ったお部屋で、ずっと本を朗読しなくちゃいけないのよ!」

「それは大変。アナベラ姫を大叔母様から救い出せて、光栄のいたり」

 わざと大袈裟おおげさにお辞儀をするウィル兄様に、手を叩いて笑う元悪役令嬢。


 その様子を、微笑んで見つめながら

「お兄様、アナベラさんのお姉様――オリヴィアさんて、どんな方なの?」

 ふと首をかしげた、シャーロット様に

「う~ん……綺麗な金髪で、中々可愛い子だとは思うけど。中身が、全然わからないからなぁ」

 と首をひねったイーサン様が、ミセス・ジョーンズが切り分けたケーキを配りながら、メイドのベティと、楽しそうに話しているアナベラに、目を留めた。


「アナベラ、ちょっといいかな?」

 イーサン様に声を掛けられて

「はいっ……」

 恐る恐る――寄って来たアナベラに、苦笑いしながら

「さっきは、驚かせてごめんよ。聞きたい事があるんだけど……オリヴィアお姉様は、きみに似ているかい?」

 問いかけられた元悪役令嬢は、きゅっと、唇を噛み締めた。


 美人のお姉様と比べられて、いつもお母様に、ため息をかれているという――ベティに聞いた話を思い出して、はらはらしながら見守っていると

 そっと小さな肩にかけた、優しいベティの手に、勇気付けられながら

「いいえ……全然似てないって、いつも言われます」

 しょんぼりと、返事をしたアナベラに、

「そっかぁ――それは残念!」

 にっこりと、大きな声と笑顔で返したラスボス。


「残念……?」

「アナベラに似てるんだったら、いい子なんだろーなって、思ったんだけど?」

 イーサン様の言葉を受けて、ぱあーっと……お日様に照らされた花のように、輝いていくアナベラの、灰色の瞳に、優しくうなずいてから

「という訳で――ほとぼりが冷めるまで、お世話になるよ?」

「は?」

「しばらくいられるの、お兄様?」

 呆然ぼうぜんとした顔の領主と、はずんだ声を出す妹に

「愛するロッティが望むなら――しばらくどころか、何年でも?」

 ウィンク付きの決め台詞を、次代の狼城領主は、にやりと告げました。


 さすがラスボス……かっこいいー!(心のペンライト振り振り)

 そもそも、自分の恋(狩り?)の為に、病気の妹を邪魔者扱いするなんて……アナベラ姉が『いい子』とは、到底思えないし。

 イーサン様だったら、他に幾らでも、お似合いのご令嬢がいるはず。

 確か以前、『はかなげで、守ってあげたくなる子』がタイプって……まぁ、そんな都合よく、理想のタイプが、見つかる訳ないか。


 そういえばミック、すごくお疲れの様子だったけど、馬車の中でも『ウィルフレッド様VSイーサン様』に巻き込まれて、大変だったんだろーな……(しみじみ)

 ポートリアの話も、詳しく聞きたいし、こっちも留守中の

『AR来襲』と『ヒューバートルート・始まる前に終了事件』の顛末てんまつ(ミセス・ジョーンズが話してた『詩の朗読会』って、『ラップバトル』の間違いなんじゃ?)と、華麗なお嬢様のご活躍を、報告しなくちゃ!


『干物パーティー』の打ち合わせもあるし、明日ゆっくり話せるといいな♪

 おやすみなさい。



(ユナの日記より)


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