侍女の日記15
◇◇◇
こんばんは、ユナです!
いや~っ、まさかまさか『悪役令嬢アナベラ』を、『妖精みたい』と、言う日が来るなんて……自分にびっくり!
でも、今日のアナベラは、本当に可愛かったなー!
口元がニッコリしてると、目元も『キツイ』から『キリッとしてる』に印象が、変わる事を発見。
わたしにも、『一昨日助けてくれたのと、この髪型、ベティに教えてくれて――ありがとう』って、恥ずかしそうに、お礼を言ってくれたし。
昨夜、使用人食堂で、ベティが
「シャーロット様って、編み込みとか――いつもステキな、髪型されてますよね? あれはユナさんが?」
と尋ねて来て、
「うん」って頷くと、
「もし良かったら、わたしにも、教えて頂けませんか?」と――
アナベラがボリュームのある黒髪を、密かに嫌がっている事や、お姉様が綺麗な金髪で、中々の美人さんな事。
いつもお姉様とお揃いの、ピンク色のドレスが、大嫌いな事。
お母様から『お前もせめて、金髪だったらねぇ』と、ため息吐かれている事……を、話してくれた。
「いや、黒髪だってステキだよ!」
「そうそう! わたしも協力する!」
「わたしも!」
エマやジェインも手を上げてくれて、わたしの寝室に移動してから、二人をモデルに、一番簡単に出来そうな、『くるりんぱ』を伝授。
見事に成功してて、良かった良かった!
そして、ブランコにお嬢様が、交代で乗せてもらっていた時、ふと思い出して、手を入れてみた、樫の木の洞。
「あった……」
かさりと指先に、紙が触れた。
『千バラ』で、ヒューバートとシャーロットが、この樫の木に空いた穴を使って、密かにメッセージのやり取りを、してたんだよね。
恐る恐る、取り出した紙を開いてみると
『シャーロット……君を見るたびに、高鳴るよ心臓。目と目が合ったら、高まるよ緊張。 HH』
という、謎のリリック、いえポエムが。
『HH』って、ラップネーム? ……『ヒューバート・ヘア』の頭文字か!
そもそもゲーム内では、弟君がプレゼントした詩集に、所々アンダーラインが引いてあって、それを繋げると『裏庭 樫の木 穴』に。
そのヒントを見つけると、『秘密の文通ルート』が、解放されたんだよね。
詩集の伏線がないこの世界で、シャーロット様がこの洞に、たどり着く確率は、00.0%……
とりあえず――ツッコミどころ満載なポエムを、そっと閉じて、誰にも見つからないよう、穴の奥深―くに、ぐりぐりと埋めておきました。
合掌。
昼食の時間を知らせに来た、ミセス・ジョーンズに、
「あのっ――エプロンありがとう! 嫌いな色の、ドレスが隠れて、嬉しい!」
とアナベラが、お礼を言っているのを聞いた、シャーロット様が
「『ピンクは止めた方がいい』って――この事だったのね! どうしてアナベラさんが、ピンク色のドレスが嫌いな事を、知ってたの?」
後でこっそり、ミセス・ジョーンズに尋ねると
「娘――ロージーが、気に入らないドレスを着たときと、同じ仕草とお顔を、されてましたから」
微笑みながら……少しだけ、切なそうな答えが、返って来ました。




