侍女の日記12
◇◇◇
こんばんは、ユナです!
ついに来襲しました『悪役令嬢』!
『どんとこい!』と、身構えていたんですけど……まさか、あんなちびっ子――いえ! お子様だったとは‼
「ギボン子爵家の、上のお嬢様が17歳、次のお子様が15歳と、伺っておりましたので、てっきり。15歳なのは跡取りのご子息様で、その下が10歳のアナベラ様とのこと……ウィルフレッド様に確認せずに、申し訳ございませんでした」
と、ミセス・ジョーンズが頭を下げたり、
「そんな――わたくしがきちんと、お聞きしなければ、いけなかったのよ。アナベラさんが、こちらにいらしたのは、初めてなのね?」
「はい。いつもウィルフレッド様から、訪問されてましたので」
「あのお部屋だと少し、大人過ぎたかも。 もう少し可愛い――ピンクとかを、基調にした方が、良かったかしら?」
「いえ! 『ピンク』は、お辞めになった方が、よろしいと思います」
きっぱりと言い切る、ミセス・ジョーンズの返事に、シャーロット様が、首を傾げたり。
最初は「なーんだ」って、拍子抜けしたけど――お子ちゃまでも、さすがアナベラ。
来て早々、お嬢様に喧嘩売るなんて、ええ度胸しとるやないけーっ‼(怒)
『あなたが、ウィル兄様の婚約者だなんて――ぜーったい、認めませんから』?
はぁーっ? 別に認めてくれなくても、お二人のご結婚に、1ミリも支障ありませんけど⁉(鼻息)
そもそも、ウィルフレッド様が仰った『あまり迷惑をかけない大人しい子』って、どこにいるのかなー⁉(きょろきょろ)
……という内容を、かなーり上品に翻訳して、お嬢様にお伝えしたところ
「ユナったら……アナベラさんは、まだ小さいのよ? お兄様を取られてしまったようで、寂しくて――つい言ってしまったのでは、ないかしら?」
ほんわりと、宥められて
「……そう、かもですね」
「晩餐には、ウィルから好物だとお聞きした、ベリータルトも用意したし――ご機嫌を直してくださるわ、きっと」
にっこりと微笑んだ、シャーロット様のお心遣いは
「アナベラ様から『疲れているので、夕食はお部屋で取りたい』と、ご連絡が……」
申し訳なさそうな、ミセス・ジョーンズからの伝言で、無となりました。
「まぁ、あの年頃の女の子も、色々ありますから……」
娘さんを育てた経験のある、ミセス・ジョーンズが、仕方ないと笑えば
「そうだよねぇ……」
とおばあちゃんが、意味深に、わたしとお嬢様を交互に見た。
ん? わたしはあそこまで、我儘放題とか、お転婆じゃなかった――と思いますけど⁉
お嬢様だって……はっ! そういえば、ジェラルド様の弟子になられたのが、7~8歳頃だったって。
――まぁ、色々ありますよねっ!




