侍女の日記2
◇◇◇
……見ました?
見ました、皆さん⁉
馬車から降りるシャーロット様を、すかさずエスコートするウィルフレッド様を!
篝火に銀と金の髪を煌めかせ、見つめ合うお二人を!!
しかも、馬車の到着が遅れたのに気が気でなく、領主自ら、門前で待ち構えていたなんて……尊死‼
……失礼しました。つい、オタクメーター振り切ってました。
わたしユナは、お嬢様と乳母様の後から、平静を装って馬車を降り、こちらの執事さんと家政婦さんにごあいさつ。
お嬢様の軽食とお風呂、寝支度をお手伝いしてから、暖かい具だくさんスープにリンゴのタルト(絶品)を頂き、使用人棟のわたしの部屋に案内され……
怒涛の一日の最後に、『本日の尊み』を書き記しています。
(ちなみに、執事=男性使用人のトップ、家政婦=女性使用人のトップ、従僕=男性使用人)
お嬢様のお部屋は『奥方の間』と呼ばれ、代々の伯爵夫人が使っていた部屋。
すっかり模様替えしたらしく、新しいカーテンや壁紙、ベッドなどの家具まで……まるでシャーロット様を、待っていたかのようでした。
「どことなく……狼城のお部屋に、似てますね?」
化粧台の前に座った、お嬢様の髪をとかしながら、思わず尋ねると
「ユナもそう思う? なんだか、わたくしも――そんな気がするの」
不思議そうに、頷かれる。
「もしかして――ウィルフレッド様が」
「えっ?」
「お嬢様が、お寂しくないように……あちらと似た感じの、お部屋になるよう、ご配慮されたのでは?」
ゆっくりと、さり気なく、
「ご婚約が決まってから、何度もお手紙が、来てましたよね? 『好きな食べ物は? 色は? 花は?』って……お嬢様のお好みを、知りたかったのですわ、きっと」
「そっそんな事――ユナの考えすぎよ!」
ツンっと返した、言葉とは裏腹に――ほんのりと頬を染め、ぼんやりと左手を見つめる、シャーロット様。
よっしゃ……!
心の中でガッツポーズ。
あせらず確実に、『仇敵との政略結婚』から『心から愛し合うハッピーウェディング』ルートに。
お嬢様の幸せのために、全力で頑張ります!
明日から新しい職場、絶対寝坊しないように。
あ、馬車でシャーロット様が見た、夢については、また後日……おやすみなさい。
(ユナの日記より)




