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サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


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選挙の準備

【火曜日】

「投票箱は、使用人棟1階ホールと、村の雑貨店に置く予定です。

 投票用紙は、裏の白いあまり紙を、学校で生徒達が、人数分切ってくれる事になっています。

 投票箱も学校の備品を、お借りすることが出来ました」

 翌日の午前中、家政婦のミセス・ジョーンズが、『選挙』の準備状況を、流れるように、奥方の間で説明した。


「素晴らしいわ、ミセス・ジョーンズ! 昨日のうちに、そこまで用意できるなんて……」

 胸の前で両手を組み合わせ、感嘆しながら、賛辞を送るシャーロット。

「本当に素晴らしいです――尊敬します!」

 ぱちぱちと拍手を送りながらユナも、あこがれのまなざしで、兎穴の家政婦を見つめる。


「そんな……アメリア、いえミセス・マウサーの助言のおかげです! わたし一人では、とても――」

 少し頬を染めて、首を横に振る家政婦に

「そんなことありませんよ! まぁわたしも少しは、お手伝いしましたけどね……ほとんどはこの、マーガレットのお手柄ですよ!」

 狼城の乳母は笑顔でぽんっと、ミセス・ジョーンズこと、マーガレット・ジョーンズの背中を叩いた。


「ミセス・ジョーンズは、『マーガレット』というお名前なのね?」

「可愛いお名前ですよね――おばあちゃんの名前が『アメリア』だって、忘れてました」

「あの二人、ファーストネームで呼び合っているなんて……本当に、仲良しなのね?」

「選挙の件で、仲たがいしてしまったかと、心配しましたけど――良かったですね!」

 こそこそと、小声で話していたシャーロットとユナに


「そしてこちらが、投票場にる――『見本図』です!」

 家政婦と乳母はそれぞれ、二枚の大きな紙を広げて、得意そうに、かかげて見せた。



 紙の上にはそれぞれ、美しいドレスを身にまとった、レディが描かれている。

 上半身はどちらも同じ、つつましく開いた襟元と短いパフスリーブが、レースやリボンで飾られている。

 スカート部分は、一枚はすそに向かって、華やかに広がる、プリンセスライン。

 もう一枚は、細身のスカートの上にドレープを寄せて、腰の後ろでふくらませ、長い裳裾もすそを優雅に引いた、バッスル・ドレス。


 そして、ドレスを着ているレディの顔は

「お嬢様……シャーロット様に、そっくりです――‼」

 公爵令嬢に、『生き写し』だった。



「驚いたわ……! こんな上手――いえ素晴らしい絵、どなたが描かれたのかしら?」

「ヘア村に、有名な画家さんが、いらっしゃるんですか⁉」

 口々に驚きの声を上げる、令嬢と侍女に

「それは――お答えできないのです。本人から、固く口留めされておりますので」

 困り顔で、でも誇らしげに、ミセス・ジョーンズは答えた。


「明日からいよいよ、投票が始まりますね――負けませんよ、アメリア!」

「こっちだって、負けるつもりはありませんからね、マーガレット!」

 がっちりと握手を交わす、家政婦と乳母。



『シャーロット様のウェディングドレス、選ぶのはあなた!』選挙戦、運命の開票日まで、あと三日!



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