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サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


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~幕間~『いばら姫の目覚め』3

「ウィルフレッド様は……」

「うん?」

「わたくしの事も。

 その――ただの『妹みたい』だと、思ってらっしゃるのでは?」

 それまでとはトーンの違う、どこか思いつめたような、公爵令嬢の低い声。


「は?」

 きょとんと、目をまたたいた領主が

「なんで……そう思うの?」

 ゆっくりと、問いかける。


「だって、わたくしの事をいつも、子供扱いして。からかってばかりで……」

 シャーロットが、ポツリと落とした言葉に

「あーっ! そこかぁ……」

 ウィルフレッドは、ばさりと天を仰いだ。



「ごめん……あれは、『父親譲り』なんだ」

「『父親譲り』?」

 思いがけない言葉に、ぱっと顔を上げると

「家の父が、いつも母をからかってて。それを小さい頃から、見ていたから」

 照れた顔で、領主が告げた。


「お父様が、お母様を?」

「うん。すっごく仲のいい、両親なんだけど。子供から見て、恥ずかしくなる位。

 いわゆる、『好きな子ほど、かまいたい』――ってヤツ?」

 ニヤリと返されて、『好きな子』という言葉が、公爵令嬢の頬を、じわじわと、赤く染めて行く。



「そうだ! 朝から思ってたけど、そのドレス……」

「えっ! やっぱり、地味過ぎましたか?」

 ギクリと、くすんだ鳩羽根(はとばね)色を、見下ろしたシャーロットに

「地味……? そんな訳ないよ! 

『すっごく良く似合う。まるで、妖精の姫君みたいだ』って。

 ずっと、言いたかったんだ」

 はにかんだ笑顔で、告げられた言葉。


『どうして、この方には――わたくしが、言って欲しい言葉が、わかるのかしら?』

  不思議な気持ちで、青灰色せいかいしょくの瞳を見上げると、優しく細められ。

 肩におかれた両手に、ぐっと引き寄せられて、ふわりと、黒い上着に抱きとめられた。

 その時、シャーロットが、はっと、気が付く。


 あの時、ミアの肩に置かれた、領主の右手。

 あれは、抱き寄せられた今とは、逆に。

 やんわりと、引き離す方向に、向いていた事を。



「からかった時の、シャーロットの反応が、あんまり可愛かったから。

 それを見たくて、つい。

 でもその事が、不安にさせてたんだね。

 気が付いてあげられなくて――本当に、ごめん」

 耳元で、きちんと謝ってから。

 肩から離した両手が、今度は、ほんわり染まった頬を、優しく囲う。



「好きだよ、シャーロット。

 妹じゃなく、親同士が決めた、婚約者だからでもなく。

 わたしだけの、恋人として」



 ありったけの想いを込めて、告白した領主が、顔を屈めて。

 ほの赤い唇に、そっと、キスを落とした。


「あの――野原で、見つけた時から」


 はっと公爵令嬢が、バイオレット・サファイアの瞳を上げると。

 アッシュブルーの瞳が、愛おしそうな輝きを、ゆらりとともして、見下ろしていた。



 この瞳が。

 この声だけが。

 今まで、自分でも知らない場所で、静かに眠っていた。

『恋しい』という、

 感情を、揺り起こす。



「わたくしも……」

「うん?」

「わたくしも、あなた以外は、イヤです……『ウィル』」

 思わずするりと、素直な気持ちが、口から飛び出した。


「今、『ウィル』って?……やったーっ‼」

「きゃっ!」

『イエス』の答えを聞いて、舞い上がった領主が、ひょいっと公爵令嬢を、抱き上げる。



「もう一回! もう一回言って、ロッティ!」

「もうっ、いきなり……危ないですわ、ウィルったら!」


 婚約者を、お姫様抱っこしたまま、浮かれて、くるくると回る、ウィルフレッド。

 楽しそうに笑い声を上げて、その首に両手で、しっかりとしがみつく、シャーロット。


 ふわりと揺れる、ドレスのスカートと、重なったペチコートが、まるでいばらから咲いた、薔薇の花びらのよう。




『お姫様の呪いを解くのは、いつでだって、王子様のキス』




 幸せな二人のダンスを、温室の外から、小鳥やリスや、野ウサギ達が、こっそりと見守っていた。




【おまけ】


「よー、ミア! あれっ、領主様はどーした?」

「知らないわよっ……! あんな朴念仁ぼくねんじん!」

「何だぁ、ふられたのか?」

「こっちが、ふったの!

『あれっミアは、頑丈そうな肩、してるんだね?』とか、

『シャーロットは華奢で、妖精みたいだろ? いつか羽が生えて、飛んで行ってしまわないか、心配なんだ』とか、

 失礼かつ、寝とぼけたノロケばっか、言ってるから‼️」


 それに、

『そこの天幕の前で、シャーロットが見てたのに――わざとやったろ?』

 冷たい声と視線で、肩を押しのけられ。

『二度とやるな』

 ぴしりと、むちのような声に、ひやりと、背筋が凍った。


『自分だって「妖精の王子様」みたいな顔してて、中身は「魔王」じゃないっ! あんの詐欺師っ‼』



「まぁ――仕方ないわ、シャーロット様と比べたら!」

「「「だなっ……!!!(こっくり)」」」

「そろってうなずくなーっ‼️」



 ミア&酔っ払いおじさんズでした☆


『~幕間~いばら姫の目覚め』完結しました。

拙いお話ですが、始めてのシャーロット目線を、楽しんで頂けたら嬉しいです。


ブックマークや評価(ページ下部の☆☆☆☆☆)も、よろしくお願いいたします。


次回は『シャーロット目線2』に、挑戦してみようかと思ってます。

(「可愛い」と、ご感想を頂けたので)

また読んで頂けたら、嬉しいです。 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 全部♪ [一言] はぁ〜…←溶けたw 何時読み終わるんだの人ですみませんf^_^; 何だか大事に取って置きたくて。 ウィルフレッド様の言葉が読んでいる此方も欲しい物をくれるので…読んでい…
[良い点] ここまで読ませてもらいました! シャーロット様がナイフを投げたときは、声に出して「えええーーー!」と言ってました笑 この物語がどこに落ち着くのか、引き続き読み進めていきます!
[良い点] 1章読み終わりました! シャーロットとウィルフレッドのやりとりが可愛くて頬が緩みました。 そして侍女ポジションのユナが転生者であることやミックまで転生者であることが新しいなと感じました。 …
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