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サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


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侍女の日記6

 ◇◇◇

 お久しぶり(前回から、まだ一日しかたってない――って嘘でしょ!?)、ユナです!

 いや~……名探偵もびっくりの、大事件でしたね!


 犯人のウィーズルは元役者で、自分と背格好の似た貴族に、ニセモノの紹介状で雇われては、主人に成りすまして、盗みや賭け事を、繰り返していたそうです。


 身に覚えのない借金の請求書を、不審ふしんに思ったテリー伯父様が、ウィルフレッド様のお父様に相談。

 ポートリアに出向き、過去の事件も調べたお父様に、問い詰められたウィーズル。

 自白するからと、人気ひとけのない場所に、お父様を呼び出し、頭を殴ってがけから落とそうとした。


 その現場を、港に入ろうとした海軍の船から、たまたまジェラルド様に見られていた――という偶然にも、びっくり!

 幸い、船上の軍人達が騒ぎ出したので、崖から落とすのはあきらめて、そのまま逃げたらしいけど。



「思い出すのが遅くなっちまって、すまん!」

 と、頭を下げたジェラルド様に

「とんでもない! ジェルさんは、父の命の恩人です! 本当に、ありがとうございました‼」

 ウィルフレッド様も深く頭を下げて、二人がっちり握手をした……という話を聞いたのは、お見舞いに来てくださったシャーロット様から。


「だからジェル兄様は、前領主の肖像画を、あんなに気にされていたのね?」

 にっこりと、わたしのベッドの枕元で、微笑んでらっしゃる……まぶしい! 殺風景さっぷうけいな使用人棟の寝室に、たった今、天使が降り立ちました!



「大丈夫です! どこも痛くないし、普通に働けます!」

 と言い張る、わたしの主張は、聞きとげられず、

「いけません――! 今日は一日、おとなしく寝ていること!」

「まったく昨日は、生きた心地がしなかったよ……今日はベッドから、一歩も出るんじゃないよ!」

 お嬢様とおばあちゃんにWでしかられ、事件の翌日、丸一日休むことに。


 それにしても

「こんな事件、『千バラ』には、かけらも出てこなかったけど。ミックの事も……原作に無い事が、なんで次々と起こるんだろ?」

 う~むと、ベッドの上で、首をひねっていたら


「ユナ――! 大丈夫!?」

「昨日、大変だったんでしょ!?」

 お昼休憩の合間に、エマ達が、わたしの昼食 (オートミールのトマトリゾット)を持って、お見舞いに来てくれた。



「ごめんね、ユナ。わたしが『お屋敷の中を探して』なんて、頼んだせいで……」

 しょんぼりとジェインが、頭を下げる。

 ちなみに、子ウサギ達を逃がしたのも、犯人の仕業しわざ

 自分が書斎を探す間、使用人達を、屋外にとどめておくために。


 まったく、敵ながら頭の回るヤツ!

 ハルもナツも無事だったから、良かったけど。

(迷い込んだ厨房ちゅうぼうで、新鮮な人参をたくさん貰って、ちやほや甘やかされていたそうです)


「何言ってるの!? ジェインのせいじゃないって! あれはわたしが、勝手に暴走したせいなの!」

 あわてて否定した、わたしに

「でも、ほんと申し訳なくて……あのこれ、お見舞い」

 そっと、『紙ばさみ』が、手渡された。



「この前ユナに言われて、その――お話を、書いてみたの。『妖精のシャーロット姫と、人間のウィルフレッド王子』の」

 恥ずかしそうに、小声で言われて


「嬉しい……すっごく嬉しい! ありがとう! 読むの、めちゃめちゃ楽しみ‼」

 前世のバインダーに似た、紙ばさみの中には、びっしりと文字が書き込まれた紙が。

 やったーっ! ウェルカム、二次創作‼


「わわっ! 目の前で読むのは、止めてー‼」

「ちょっと、二人だけで、何話してるの?」

「何でもないから!」

 ほかほかのリゾットを頂きながら、メイド仲間と、盛り上がっていると



「にぎやかね?」

 すぅっとすずやかな、風のような声が通る。

「シャーロット様……!?」

 公爵令嬢がにっこりと、わたしの部屋の入口に、たたずんでいた。


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