表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/155

伯父様と晩餐会

「大変、お待たせいたしました――はじめまして、ゴート卿。シャーロット・ウルフにございます」

 急いで身だしなみを整えたシャーロットが、客間で待っていた来客に、しとやかに挨拶をした。


「おぉ……これは、美しい! いやいや、『ゴート卿』なんて他人行儀な――『テリー伯父様』と呼んでおくれ。まったくウィルは、幸せものだ!」

 感嘆の声をあげる、初老の紳士。

 顔の下半分をおおった、真っ白なヒゲを、満足そうになでている。


「申し訳ございません、ウィルフレッド様は、外出されておりまして」

 シャーロットの謝罪を聞いて、執事が注いだシェリー酒のグラスを、口に運びながら

「いやいや、謝ることはない。色々と、忙しいんだろう? 何といっても――明日は二人の、結婚式だからな!?」

『テリー伯父様』は、陽気な笑い声をあげた。



「……ごめん、シャーロット。手紙が行き違いになって、伯父上は、式が延期になったことを、知らなかったそうだ」

 出先から、あわてて帰って来たウィルフレッドが、婚約者に頭を下げる。


「実は、父がケガをしたのが、滞在中の伯父上の屋敷から、ひとりで出かけた時の事で。責任を感じられて――『両親の分まで結婚式は、わしが仕切らねば!』と、張り切ってらっしゃるんだ」

「ウィルフレッド様が、謝ることではありませんわ」

 怒るどころか、くすりと笑みをこぼしたシャーロットに、領主が不思議そうな顔を向けると


「『いたずらっ子』で、いらしたんですね?」

「え?」

「伯父様から、お小さい頃のお話を、うかがっておりました。

 兎小屋で眠ってしまって、翌朝見つかるまで大騒ぎだったこと。ギャラリーの肖像画に、ヒゲを描きまくったこと。子猫が入った木箱が、川で流されているのを、助けようとしておぼれかけたこと。それから……」


「ごめん――もう、かんべんしてください」

 額に手を当てて、うな垂れた領主に

「実は……わたくしも乳母たちに、『たいそうお転婆てんばだった』と、言われております」

 秘密をささやくように、伝えると

「じゃあ……『ロッティの武勇伝』も、後で教えて?」

 婚約者は、いたずらっ子の笑顔で、ささやき返した。



 いつもは簡単に済ます夕食だったが、今夜は来客を迎えての『晩餐会ばんさんかい』。

 こちらに到着してから初めて、シャーロットは、夜会用のドレスを身に着けていた。

 乳母と侍女が二人がかりで、ドレスを着付け、髪を整える。


 レースやフリルで飾られた、オフショルダーの、ライラック色のドレス。

 銀色の巻き毛を肩にらし、ドレスに合わせた髪飾りと、真珠のネックレスにピアスを付けて。

 白いかすみのようなショールを、ふわりと腕にかけて、シャーロットは、階段を降りて行った。


 ホールで待っていたウィルフレッドが、顔を上げる。

 兎穴の領主も、初めての正装姿……黒のテールコートと白い蝶ネクタイ、銀の刺繍ししゅうが入ったグレーのベストを、身に着けていた。


「――お待たせしました」

 見慣れない姿に、どきりとしながら声をかけると、目を見開いたまま、固まっていたウィルフレッドが

「すごく、キレイだ……」

 うっとりとつぶやいて、右手を差し出す。


 ぴょんっと、子ウサギみたいに、はね上がる心臓。

 ふうっと深呼吸をしてから、差し出された手に、左手を重ねる。

「――ありがとうございます。ウィルフレッド様も」

「うん?」

「ステキ、です……」

 うつむいて、小さな声で伝えた途端、重ねた手が、ぎゅっと握られた。


「……くやしいなぁ」

「はい?」

 思いがけない言葉に、顔を上げると

「このドレス姿が、『テリー伯父様』のためだなんて――でも」

 ささげ持った左手に、手袋越しのキスを落として、片目をつぶる婚約者。

「こんなにキレイな、ロッティが見られた事は、伯父上に感謝――だな?」



「ウィルフレッド様……!」

 頬を真っ赤に染めて、さらに愛らしさを増した公爵令嬢を、

 意気揚々(いきようよう)と領主は、晩餐会の席に、エスコートした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 子うさぎみたいに跳ねる心臓……こんな表現をする作者は多分マルフォイなんだろうな(っω<`。)
[良い点] こちらまで拝読致しました。 めちゃくちゃ可愛いドレスの描写に、思わずコメントを…… 銀髪にライラック色でパールを合わせるセンス、大好きです♡ どう考えても可愛い! そして『子ウサギみたいに…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ