表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サウザンド ローズ ~転生侍女は、推しカプの尊さを語りたい~【番外編16「『時のはざま書店』にようこそ」完結☆】  作者: 壱邑なお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/155

領主のヤキモチ

 広間から温室へと移り、いつの間にか日課となった、ガゼボでの昼食の後で

「今日も午後から仕事で、出かけないとなんだ。ずっと放っておいて、ごめん――シャーロット」

 申し訳なさそうなウィルフレッドに、頭を下げられた。


 領主の仕事は、『領地経営』……と、一言では言いきれないほど、忙しい。

 代理人(土地管理人)と相談しながら、領民の生活を豊かにする為の、施策しさくをねり、領地を見回り、事件やもめ事が起きた際の、裁判にも関わる。

 近隣の貴族との社交さえ、人脈じんみゃくを作る、大切な仕事。


「わたくしの事は、お気になさらず」

 シャーロットは、にっこり答える。

 領主の忙しさは、父を見て、知っているから。


「今日はジェル――いえジェラルド兄様と、遠乗りにでも、行って来ますから」

「ジェラルドと……?」

 ぴくりと、眉を寄せた領主は

「遠乗りって、どこまで?」

 真剣な顔で、たずねた。


「裏の丘の方に、行ってみようかと」

「そうか……村の方には、行かないように! その、道が悪いから」

 少し強い口調で、注意してから


「あの従兄弟殿と、仲がいいんだね?」

「はい! 5歳の頃から、一緒に育ちましたから」

「5歳」

 右手をあごにえたウィルフレッドが、ゆっくりたずねる。

「わたし達が初めて会った、あの時……シャーロットは、いくつだった?」



「あの時は……」

 ゆるやかに曲げた、左手の人差し指を、口元に当てた公爵令嬢は

「9歳、いえ8歳だったかと……ウィルフレッド様? どうなさいました!?」

 答えを聞いて、がくりと頭を下げた婚約者に、驚いて声を上げる。

「……負けた」

「はい?」

「わたしも、あと3年早く――会いたかった!」


「まぁっ……!」

 駄々(だだ)をこねる、子供のような答えに、思わず笑みがこぼれる。

「くふっ……」

 後ろにひかえた侍女からも、笑いを押し殺したような、声がもれた。



「ジェラルドは、『兄様』です」

「本当に……?」

「はい」

「あんなに男らしくて、かっこいいのに?」

「はいっ!」

 公爵令嬢は、はっきりうなずいた。


「そっかぁ――良かった」

 何度もうんうんとうなずく婚約者の姿に、くすくすと、笑いが止まらなくなり

「……シャーロット、笑いすぎ」

「ごめんなさい――あっ」


 すねた声でとがめられた後、左手がすくい取られ、キスを落とされた。

 人差し指の第二関節――先程自分の唇が触れたのと、同じ場所――に。



 息を呑んで、ぱっと、領主の顔を見下ろせば

「おしおき」

 上目使いで、ウィンクを返されて、たちまち頬が熱くなる。


「『ごめんなさい』って、言ったのに!」

 子供みたいな口調でうったえる、シャーロットの抗議こうぎ

「そうだったね――ごめん、ごめん!」

 ウィルフレッドは耐えきれずに、笑いだした。



「あんまり従兄弟殿と、仲良さそうだったから――つい。

 この前、吞みながら話したけど、裏表のない、いい人だよね。ここでももう、人気者だし」

「人気者……?」

 こちらに来て、まだ数日なのに?


 首をかしげて、侍女と顔を見合わせたシャーロットに

「午後の4時になったら、裏庭を覗いてごらん?」

 婚約者はわざと、秘密めいた小声で、ささやいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おっと、いかんいかん…侍女ちゃんの役目をマルフォイが奪うところでしたわ…(´・ω・`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ